トタン屋根は、屋根材に金属製のトタン板を使用した屋根のことです。
トタンは、高度経済成長期に屋根材として広く普及しました。現在では、新たに住宅用の屋根材として採用されることは少なくなりましたが、築年数の長い住宅ではトタン屋根の建物もまだ残っています。
このページでは、トタン屋根の特徴や修理・交換費用について説明いたしますので、今後のリフォームの参考にしていただければ幸いです。
トタン屋根とは
トタンとは、薄い鉄板に亜鉛をめっき加工した金属材をトタンと呼び、そのトタン板を利用した屋根をトタン屋根のことをトタン屋根と呼びます。
国内では、明治44年頃から国産化され、戦後瓦よりも安く、施工が簡単なことから、多くの住宅の屋根材に採用されました。
現在は、スレートやガルバリウム鋼板が主流となっているため、新たに住宅用の屋根材としてトタンが採用されることはほぼなくなりましたが、安価なことから倉庫や工場では今もよく採用されています。
トタン屋根のメリット
価格が安い
トタン屋根の最大のメリットは、材料費や施工費が安いという点です。施工が簡単で工事が短く済むため、全体のコストを抑えることができます。
軽量なので建物への負担が少なく、耐震性に優れている
トタン屋根は、他の屋根材に比べると軽量なこともメリットの一つです。同じ面積の日本瓦と比べ、重量は1/10以下と非常に軽量な屋根材です。
そのため、建物の重心が下がり、地震が発生しても揺れが少なく、耐震性に非常に優れているという特徴があります。
継ぎ目が少ないので雨漏りしにくい
トタン屋根には、他の屋根材に比べ、継ぎ目が少ないという特徴があります。そのため、傾斜が緩くても雨漏りしにくいというメリットがあります。
トタン屋根のデメリット
サビが発生しやすい
トタン屋根は、鉄板を使用しているため、サビやすいという特徴があります。表面のめっきや塗装などのコーティングに傷がついたり剥がれてしまうと、その部分からサビが発生しやすくなってしまいます。
一度サビが発生してしまうと、すぐにサビが屋根全体に広がってしまいます。サビをそのまま放置してしまうと、穴が開いてしまい、雨漏りの原因にもなりますので注意が必要です。
断熱性、防音性が低い
トタン屋根は薄い鉄板なので熱伝導率が高く、防音性が低いというデメリットがあります。そのため、特に夏場は室温が上昇しやすくなり、冷房代などが高くなってしまう可能性があるので注意が必要です。
また、防音性が低いため、雨音や車が通過する音などが響きやすいという特徴もあります。
メンテナンス周期が短い
トタン屋根は、サビが発生しやすいため塗装による定期的なメンテナンスが必要です。サビだけではなく、塗膜の色あせや凹みなどの不具合も起こりやすいので、補修などのメンテナンスも定期的に行う必要があります。
トタン屋根の価格と耐用年数
トタン屋根の価格は、1㎡あたり5,000〜6,000円程度が相場で、耐用年数は10〜20年程度です。
トタン屋根は、サビが発生しやすいため7〜10年を目安に塗装が必要です。耐用年数が過ぎている場合は、状況に応じて、カバー工法または葺き替えによるメンテナンスを行います。
トタン屋根の種類
トタン屋根は、形状によって大きく分けて以下の3つに分けられます。
波板トタン屋根
一般的にトタン屋根と言われてみなさんがイメージされるのは、この波板トタン屋根です。トタンを波型に加工することで、平らな板よりも強度を高めることができます。
さまざまな形状やサイズがあり、ホームセンターでも購入することが可能です。
瓦棒葺きトタン屋根
瓦棒葺きトタン屋根は、芯木(しんぎ)と呼ばれる木材を45cm程度の間隔で溝板の両脇に設置します。芯木の頂点には、キャップやカッパとよばれるコの字型の細い板金部材を取り付けます。
棟から直角に下に向かって線が入っているのが特徴で、雨漏りに強く、勾配の緩やかな屋根でも施工が可能です。
折板トタン屋根
折板トタン屋根は、台形状に規則正しく大きく折り曲げることで、強度を確保した屋根材です。主に工場や倉庫などの大型建築物で用いられます。
折板トタン屋根は、野地板なしで梁に設置することが可能なため、工程が短縮でき、下地材の費用や工事費用を抑えることができます。
トタン屋根の劣化症状
トタン屋根の代表的な劣化症状は以下の通りです。
塗膜の劣化
トタンの表面には、表面を保護するために塗装が施されていますが、経年劣化や温度の変化によって色褪せやチョーキング、塗膜の剥がれなどが起こります。塗膜が劣化することで防水機能が低下し、サビが発生する恐れがあるので注意が必要です。
塗膜が劣化している場合は、早めに塗り替えを行い表面を塗膜で保護することが大切です。
サビ
トタンは、非常にサビが発生しやすく、サビをそのまま放置してしまうと穴が開いてしまい、雨漏りの原因にもなりますので注意が必要です。
めっき部分が錆びている状況であれば、錆びを落としてから再塗装をすることで対処が可能ですが、めっきの内側までが錆びてしまった場合は、屋根材の交換が必要となることもありますので、状況が悪化する前に、メンテナンスを行うことが重要です。
穴あき
トタンのサビをそのまま放置してしまうと、強度の低下や金属の腐食の原因となり、穴が開いてしまうことがあります。そこから雨漏りが発生し、建物の内部にまで損傷が広がってしまう可能性もあるため、穴が開いている場合には、早急に処置が必要です。
部分的な穴あきであれば一部張り替えで済むこともありますが、複数穴が開いている場合は、屋根全体のリフォームが必要となります。
変形・歪み
トタンは、薄く軽量な屋根材のため、飛来物が原因で変形したり、歪んでしまう可能性があります。飛来物によって、表面を保護している塗膜が傷つくと、塗膜の剥がれやサビにつながる恐れがあるので注意が必要です。
また、トタンはつなぎ目から剥がれやすいため、強風・台風の影響で吹き飛ぶ可能性があります。特に古いトタン屋根では注意しましょう。
トタンに、変形や歪みなどの症状がみられる場合には、早めのメンテナンスが必要です。
トタン屋根のメンテナンス方法と費用
トタン屋根は、定期的なメンテナンスが必要です。トタン屋根の修理やリフォーム方法は以下の5つの方法があり、ご予算や劣化状況によってメンテナンスの方法は異なります。
塗装
色あせやチョーキングなどの塗膜劣化やサビの状態が軽度であれば、、塗装によるメンテナンスが可能です。塗装によるメンテナンスを行うのであれば、錆びる前に7〜10年を目安に、塗装することで寿命を延ばすことができます。
塗り替えを行う際には、ケレンで屋根表面の旧塗膜やサビなどを綺麗に除去してから、錆止めを塗布し、中塗り・上塗り塗装を行います。
すでに、トタンはサビで穴が開いていたり、サビで部分的に崩れている場合には、塗装は不可能ですので、錆を発見したら、早めに塗装を行いましょう。
塗装の費用は、使用する塗料のグレードや製品によって金額は異なりますが、2,400~4,500円/m2程度が相場になります。なお、足場代が別途必要になります。
部分的な張り替え
トタンの穴あきが軽度な場合や、部分的な傷やめくれなどが起こっている場合には、損箇所のみを張り替えで補修することが可能です。ただし、固定している釘の状態や屋根の下地の劣化状況によっては、部分的な張り替えが難しいケースもあります。
部分張り替えの費用は、10万円〜20万円が相場となります。ただし、補修の規模や内容によって金額は大きく異なりますので、あくまでも目安として、参考にしてみてください。
カバー工法
カバー工法とは、既存のトタン屋根の上に新しい金属屋根材を被せる工法です。カバー工法では、これまでのトタン屋根の上に防水シートを敷いてから、新しい金属屋根材を被せます。
新しい金属屋根には、ガルバリウム鋼板を用いて仕上げますが、古いトタン屋根のうえに野地板を敷いて、金属屋根を被せることになるので、葺き替え工事と比べて大きく費用は変わりません。
そのため、基本的にはトタン屋根はカバー工法ではなく、葺き替え工事をおすすめします。カバー工法の費用は、5,000〜8,000円/㎡程度が相場となります。
葺き替え
葺き替えとは、既存のトタン屋根を全てはがし、新しい防水シートや屋根材に葺き替える工法です。トタンは、他の屋根材に比べると耐久年数が短いというデメリットがあるため、トタン屋根からガルバリウム鋼板屋根への葺き替え交換が現在主流です。
ガルバリウムは錆びに強いため、トタンほど頻繁に塗装をし直す手間がかからないので、葺き替えにおすすめの屋根材です。葺き替えの費用は、6,500〜8,000円/㎡程度が相場となります。