屋根工事・修理について調べていると「板金」という言葉がよく出てくるかと思います。
屋根の板金には、雨水が屋根内部に入り込むのを防ぐ役割があり、劣化を放置していると雨漏りの原因となってしまうため、その重要性について理解しておくことが大切です。
このページでは、屋根板金の種類やよく見られる劣化症状、メンテナンス方法について説明いたします。
目 次
屋根板金とは
一般的に板金とは、金属を板状に加工したものを指します。その板金を屋根の接合部分などに取り付けたものを屋根板金と呼び、屋根材のつなぎ目から雨水や風、虫などの侵入を防ぐという重要な役割を担っています。
屋根の面と面が重なる接合部分には、どうしても隙間ができてしまいます。
その隙間をそのままにしてしまうと、雨が降ったときに隙間から雨水が浸入してしまうため、屋根板金で隙間をカバーすることで、雨水が建物内部に浸入するのを防ぐ役割を果します。
また、屋根板金で使われる素材は、古い建物の場合トタンがよく使われていましたが、現在ではガルバリウム鋼板が現在主流となっています。
屋根板金の耐用年数は15年程度と言われていますが、屋根は雨風の影響を受けやすいため、耐用年数よりも早く修理や交換が必要となる場合があります。
屋根板金の種類
ガルバリウム鋼板やトタンなどの金属屋根材も屋根板金の一つではありますが、ここでは屋根材ではなく、主に接合部に使われる板金について説明します。
また、屋根板金とひとくちに言っても、その種類は様々です。ここでは、代表的な5つの屋根板金を紹介します。
棟板金(むねばんきん)
棟板金とは、屋根の一番高い所に取り付けられた板金のことです。主にスレート屋根や金属屋根などの屋根材で使用されます。
切妻屋根や寄棟屋根など、日本の住宅の屋根は三角形のような形になっているものが多く、その三角形の頂点を覆うように板金を設置することで、隙間から雨水が浸入するのを防ぎます。
屋根の棟部分には、屋根材の上に貫板と呼ばれる木材が設置されています。棟板金が貫板を覆うことによって、木材の腐食を防ぐ役割もあります。
また、棟板金は屋根材の上から被せるので、同時に屋根材を固定する役目も果たしています。
谷樋板金(たにといばんきん)
谷板金とは、棟板金とは逆に、屋根の谷となる部分に取り付けられた板金のことで、屋根の種類や形状によってはこの谷板金がない場合もあります。
屋根の谷となる部分は雨水が集中して溜まりやすいので、ゴミや落ち葉が溜まっていたり、板金の劣化が進行していると、雨を正しく排水できずに雨漏りを引き起こしてしまう可能性があります。
そのため、雨水が滞留しないよう樋を設けて溜まった雨水を横樋に運ぶ役割があります。
また棟部分と同様に、谷板金を取り付けて隙間をカバーすることで、屋根の接合部分にできる隙間から雨水が浸入するのを防ぐ役割も果たします。
水切り板金(みずきりばんきん)
水切り板金とは、屋根と外壁の接合部や屋根の妻側部分(ケラバ)に取り付けられた板金のことで、ケラバは屋根の妻側の先端部分のことを指します。
水切板金歯は設置される箇所ごとに名称があり、先程紹介した谷板金も水切り板金の一つです。その他にも、ケラバ捨て水切りや壁止まり板金、雨押さえ板金、軒先水切りなどの種類があります。
水切板金には、雨水が屋根から外壁に伝わらないよう防いだり、屋根に降った雨を雨樋へ流すという役割があります。
雨押え板金
雨押え板金とは、水切板金に分類される屋根板金で、屋根と外壁の継ぎ目の部分に取り付けられる板金のことで、雨水が屋根と外壁の取り合いから外壁へ伝っていくのを防ぐ役割があります。
屋根と外壁の境目部分は、特に雨水が浸入しやすいため外部から雨水が室内に入らないようにすることが重要です。また、内部に雨水が入ってきてしまったとしても、雨押え板金によって雨水の逃げ道を確保することができる構造になっています。
雀口面戸
雀口(すずめぐち)とは、瓦屋根の瓦の軒先部分で瓦の裏面と軒先の板の間にできる隙間のことを指します。和形の瓦は波打った形状をしているため山と谷があり、、山の盛り上がった部分と鼻隠しの板の間に隙間が開いてしまいます。
その隙間に雀が入ってしまい、中で巣を作ったというのが由来して「雀口」と呼ばれています。また雀口には、雀だけではなくコウモリや虫、ネズミなどの小動物も入ってしまう可能性があり、このような動物が入り込んでしまうと様々なトラブルに発展してしまいます。
そのため、従来は漆喰で隙間を塞いでいましたが、現在ではプラスチックや板金の部材で穴を塞ぎます。この穴を塞ぐ部材のことを「面戸(めんど)」と呼びます。
屋根板金の劣化症状
屋根板金の劣化症状として、主に以下のようなものが挙げられます。板金の劣化は雨漏りに繋がる原因になるので、定期的なメンテナンスが大切です。
棟板金を固定している釘が抜ける
棟板金でよくある劣化が、棟板金を固定している釘が抜けてしまうケースです。
釘が抜ける原因には「熱膨張」という現象が関係しています。熱膨張とは、板金が太陽光の熱で膨張することです。
膨張した板金は気温が下がると収縮するため、長い期間をかけて膨張と収縮を繰り返すことになり、この板金の動きが影響して釘が徐々に抜けていきます。
釘の抜けは約7~10年程で発生するので、板金自体の耐用年数を迎える前にメンテナンスが必要になる可能性があります。
棟板金の浮きによる貫板の腐食
棟板金の内部には、野地板を支える骨組みとして貫板と呼ばれる木材が設置されていますが、それを覆っている棟板金が劣化したり、釘がゆるんだり抜け落ちたりしてしまうと、屋根の内部に雨水が入り込み貫板が腐食してしまうことがあります。
貫板は棟板金を固定するための重要な部材なので、貫板が腐食すると釘を固定する力が弱まり、棟板金の剥がれやすくなったり、板金そのものが飛ばされる事態に繋がってしまいます。
さらに、棟板金や貫板の劣化が進行すると、屋根の下地である防水シートや野地板などの劣化も早めてしまうため、最悪の場合は屋根のカバー工法や葺き替えといった大規模な工事が必要になることもあります。
サビの発生
板金の材質として現在一般的に使用されているガルバリウム鋼板は、ひと昔前まで主流だったトタンと比べて錆びにくい特徴があります。
しかし、絶対にサビが発生しないという訳ではないため注意は必要です。サビは板金の劣化症状の中でも初期の段階で現れやすく、板金自体はそこまで劣化しておらず、貫板まで影響が及んでいるケースはあまりありません。
ただ、サビが広がると板金の耐久性が低下し、浮きや破損などを引き起こす原因となりますので、症状の進行度合いに応じて適切なメンテナンスを行う必要があります。
谷樋板金にゴミや落ち葉が詰まる
屋根の構造上、谷板金では、ゴミや落ち葉の詰まりに注意する必要があります。
谷板金は、水が滞留しないように樋を設けて溜まった雨水を横樋に運ぶ仕組みになっていますが、その際にゴミや落ち葉なども一緒に流れこむことがあります。
流れ落ちずにゴミや落ち葉が蓄積してしまうと、谷板金の排水能力が限界を超えてしまい、雨水が溢れてしまう「オーバーフロー」と呼ばれる現象が発生してしまいます。
谷板金に落ち葉やゴミの詰まり、積雪などによって発生したオーバーフローによって溢れ出した雨水が行き場を無くすと、屋根内部に大量の水が入り込んでしまう恐れがあるので、定期的な点検や清掃が大切です。
また、谷樋板金に鳥が巣を作るケースもあるため、家の周りで鳥をよく見かける場合は注意が必要です。
屋根板金のメンテナンス方法
屋根板金のメンテナンス方法には、主に次のようなものがあります。
棟板金の釘打ち・コーキング処理
棟板金の釘がゆるんでいたり抜けている場合には、釘打ちとコーキング処理を行います。ゆるんでいたり抜けている部分の釘を新たに打ち直し、その上からコーキング材でフタをしていきます。
コーキングでフタをすることで、釘が抜けるのを防いだり、万が一釘が抜けたとしても雨水が内部に浸入しにくくなるという効果が期待できます。
棟板金の釘打ち・コーキング処理の費用は20,000万円〜50,000万円程度が相場となっています。
板金交換
屋根板金の劣化が激しい場合は、板金自体を新しく交換する必要があります。
交換にかかる費用は家の大きさによって異なりますが、棟板金の場合1mあたり3,000円〜、水切り板金の場合は1mあたり10,000円〜15,000円程が相場となっています。
ただし、別途足場代が必要になることもあります。
貫板交換
棟板金の下に取り付けられている貫板が腐食している場合には、貫板の交換をする必要があります。貫板は木材のものが一般的ですが、近年では水に強い樹脂製のものを使用するケースも増えてきています。
貫板の交換にかかる費用は、1mあたり3,500〜5,000円程が相場となっています。
サビ止め塗装
屋根板金にサビが発生している場合には、サビがそれ以上広がらないようビ止め塗装を行う必要があります。
サビ止め塗装にかかる費用は、50,000〜100,000程度が相場となっていますが、サビが全体的に広がっている場合は、板金自体の交換が必要になります。
その理由としては、サビが広範囲に発生している場合、板金の耐久性が低下しているため、サビ止め塗装をしたとしても強度が保てず、穴が空いたり、剥がれなどを引き起こす可能性があるためです。
板金周りの清掃
谷板金などにゴミや落ち葉が溜まっている場合には、オーバーフローを防ぐために清掃を行う必要があります。板金周りの清掃にかかる費用は、10,000円〜が相場となっています。
屋根板金の工事は火災保険を使って修理ができる可能性があります
台風などの自然災害による被害の場合、火災保険を使って屋根板金の修理ができる場合があります。
実際に火災保険を利用することができるかは、申請など所定の手続きをおこなったうえで決定されますが、基本的には以下の4つの条件を満たすことで、火災保険を利用することができます。
・「風災」による被害と認められる
・被害に遭ってから3年以内に保険会社へ申請する
・修理費用が20万円以上
(契約している保険内容によっては金額が変わります)
・代行申請ではなく本人による申し込み
また、「風災」による被害と認められる可能性があるケースとしては、「強風によって屋根板金が浮いてしまった」「強風によって屋根板金が飛ばされてしまった」「強雨によって屋根板金を固定しているクギが浮いてしまった」といった場合が挙げられます。
実際に台風の被害の中では、棟板金が強風で飛ばされて通行人に当たってしまったり、近隣建物に飛ばされた板金が当たって傷がついてしまったといった事例も少なくありません。
被害内容によっては、火災保険が適用される屋根板金の修理ですが、火災保険を悪用した工事業者によるトラブルも多くなっているため注意が必要です。
まとめ
屋根板金とは、金属を板状にした部材のことで、主に屋根の結合部に取り付けられています。
屋根板金は、屋根内部に雨水が浸入するのを防ぐ役割があり、板金の劣化を放置していると木材の腐食や雨漏りに発展してしまいます。
また、屋根板金は雨が集中しやすい箇所に設置してあるので、定期的な点検とメンテナンスが重要です。自分で屋根に登って状況を確認するのは危険なので、7~10年を目安に専門の業者に調査してもらうようにしましょう。