庇は、外玄関や窓などの開口部の上に取り付けられている小さな屋根のことで、霜よけとも呼ばれています。
庇の劣化をそのまま放置してしまうと、雨漏りや庇の破損などの被害が生じる恐れもあるので、気になる症状を見つけたら、早めに専門業者へ相談されることをおすすめします。
このページでは、庇の修理方法や費用、庇の注意が必要な劣化症状などについて説明いたします。
庇(ひさし)の修理方法と費用相場
庇の劣化や破損などの症状が見られる場合には、症状の程度によって以下の修理方法で修理を行います。また、庇が設置されている位置によっては、足場の仮設が必要となります。
面積によって費用は異なりますが、足場の仮設費用は一般的に15〜25万円程度が相場です。
塗装の費用相場
色褪せや塗膜の剥がれなど軽度な劣化の場合には、塗り替えでの修復が可能です。新しい塗膜で表面をコーティングすることで、雨風などの外部刺激から庇を守ることができます。
庇の耐久性を長期的に維持するためには、外壁や屋根と同様に10年〜15年を目安に塗り替えをするといいでしょう。
実際の作業では、塗装前に清掃や表面を研磨して既存の塗膜や汚れをしっかりと取り除き、錆止めを塗布してから上塗りの塗料で仕上げを行います。
塗り替えの費用は、5〜15万円程度が相場になります。
庇のカバー工法の費用相場
カバー工法とは、既存の庇の上に新しい防水シートと屋根材を重ねて張り付ける方法です。
庇表面の劣化がひどく、塗装や部分補修だけでは間に合わない場合でも、下地がそこまで傷んでおらず十分な強度があればカバー工法での修理が可能です。
実際の作業では、外壁との取り合い部分の古いコーキングを撤去し、木部などの補修をしてから新しい防水シートと屋根材を取り付けます。
最後に、外壁との取り合い部分に新しいコーキングを充填して雨仕舞して仕上げます。カバー工法の費用は、費用は形状や規模によって異なりますが、6万円〜15万円程が相場になります。
庇の交換の費用相場
既存の庇の損傷が激しい場合や外観を新しくしたいという場合には、庇を丸ごと交換リフォームします。
交換リフォームでは、既存の庇を取り外してから、新しい庇を取り付けます。この時、周囲の外壁もひび割れなどの劣化症状がないか確認し、もし外壁に不具合が生じている場合には、一緒にメンテナンスしておくと安心です。
庇の交換費用は、15万円〜40万円程が相場になります。
庇(ひさし)の役割
庇とは、玄関や窓などの開口部の上に取り付けられている小さな屋根のことです。
近年では、デザイン性や立地環境などによって庇を設置しない住宅も増えていますが、庇には以下の3つの役割があり、設置することで、利便性が大きく向上します。
雨の吹き込み防止
庇を設置することで庇が傘のような役割を果たして、雨が吹き込むのを防ぐ効果が期待できます。庇のない住宅では、雨水がダイレクトに外壁や窓に吹き込み、建物の劣化を早めてしまう可能性があるので注意が必要です。
また、庇の長さにもよりますが、小雨程度であれば室内へ雨が入り込む事もないので、窓を開けて空気の入れ替えをすることができますし、玄関に庇があることで、玄関先で濡れる心配がなく、置き配やお客様対応もしやすくなります。
雨だれの防止
庇が雨を遮ることで、玄関や窓に雨が直接当たりにくくなります。そのため、庇が設置されていることで、窓枠から雨だれすることも少なくなって、雨だれの跡などの汚れが付きにくくするという役割もあります。
日よけ
庇は、雨だけではなく太陽の日差しを遮る役割もあります。
夏の暑い日差しを庇が遮ることで、室内の温度上昇を抑える効果が期待できます。また、日差しが室内に入り込むことを防ぐことで、カーテンや床、家具などの日焼けを抑えることができます。
また、太陽が真南にくる夏の南中時の日射角度が78度なのに対して、冬場は31度と太陽の位置が低いので、庇があったとしても室内に太陽の日差しを取り入れることができます。
庇(ひさし)から雨漏りが発生する劣化症状
庇と外壁の取り合い部分の不具合
外壁との取り合い部分に埋められているコーキングが、経年劣化などによって柔軟性が失われると、割れて隙間ができたり、剥がれ落ちて直接取り合い部分に雨水が浸入してしまいます。
庇の内部には防水シートが敷かれていますが、コーキングに不具合が生じると雨が降るたびに雨水が浸入して、やがて防水シートもダメージに耐えきれなくなることで雨漏りに発展してしまいます。
また、庇に問題がない場合でも、取り合い部分の外壁にひび割れが生じて、雨水の浸入口になってしまう場合もあるので注意が必要です。
屋根板金の破損や穴あき
現在の住宅に設置されている庇は多くの場合、木製の土台に金属板金が設置されています。この金属板金の塗装が剥がれたり表面に傷が付くことで、腐食しサビが発生してしまいます。
サビが進行すると、最終的には穴が開いてしまい、開いた穴から雨水が浸入してしまいます。また、外壁からせり出した庇は、台風や暴風雨、大雪の影響を受けやすく、強風や大雪によって破損してしまうこともあります。
土台部分の腐食
庇の土台が木製の場合には、土台自体の腐食にも注意が必要です。表面の塗装が剥がれて防水機能が低下してしまうと
土台自体が腐食し耐久性が低下してしまいます。
また、板金や外壁と同じ素材で覆われている場合もありますが、この場合も内部が木製であれば、見えない部分から腐食が進行していることがあります。
土台が腐食してしまうと、強度が低下してしまうため台風や暴風雨の際に、庇そのものが破損したり崩壊してしまう恐れがありますので、土台の劣化が見られる場合には、早めに修理を行いましょう。
庇(ひさし)の材質
アルミ製
現在の住宅で最も選ばれているのが、アルミ製の庇です。アルミ製は、軽量で加工もしやすく、腐食も少ないことから、多くの住宅で採用されています。
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、軽量でサビにくく、熱に強いというメリットがあります。また、外壁や屋根材としても使用されているため、素材を統一することで、一体感がでてまとまりのあるデザインに仕上げることができます。
木製
木製の庇は、和風建築で採用されていることが多く、温かみのある雰囲気に仕上げることができます。主に、ヒバの木と呼ばれる耐久性の高い木材が使われています。
ただ、木材は傷みやすい素材なので、他の材質の素材よりも頻繁に塗り替えによるメンテナンスを行う必要があります。
ガラス製
ガラス製の庇は、日光を通すので採光性に優れた素材で、明るい印象に仕上げることができます。また、耐水性にも優れ、ガラスそのものが透明なので外観のデザインに干渉することもありません。
ただし、重量が大きいため設置する際は金属パーツを使用して取り付けを行います。
また、ガラスは割れやすいのでは?と心配される方も多いですが、耐久性の高い丈夫な強化ガラスが使われているので、割れる心配は少なく安心して使うことができます。
ポリカーボネート製
プラスチックの一種であるポリカーボネート製の庇は、透明と半透明の2種類があり、ガラスと同様に日光を完全に遮らないので、庇の下が暗くなりすぎないというメリットがあります。
軽量で耐候性の高い素材で、価格も安価なためカーポートや玄関の屋根にも使われることもあります。
庇(ひさし)を後付けする時の費用と注意点
庇を後付けする費用
最近は、庇のない住宅も増えていますが、このような住宅にも庇を新設したり、後付けすることが可能です。
使用する材質や形状によって異なりますが、費用は20万円〜設置が可能ですが、2階以上の高さに庇を設置する場合には、別途足場の仮設費用が必要となります。
そのため、庇の設置を検討されている方は、外壁や屋根のメンテナンス時期にあわせて検討されることをおすすめしまsす。
建ぺい率に注意
建築基準法によって、敷地面積に対して建築可能な建物面積の割合を示す「建ぺい率」というものが定められており、該当の土地に対して建ぺい率の上限を超える建物を建築することはできません。
基本的に、庇の長さが1m未満であれば、建築面積に含まれることはありませんが、1mを超える庇の場合は、庇の先端から1m先までが建築面積となります。
ただし、両端に柱や壁のある庇は、1mに満たなくても建築面積に含まれてしまうので注意が必要です。
まとめ
庇には、日差しや雨を遮る役割がありますが、劣化が進行することによって雨漏りや庇自体の崩壊などのリスクが高まります。
被害が大きくなるほど、大掛かりな修理が必要となり、修理費用も高額になってしまいますので、、庇に気になる症状を見つけた場合には、早めに専門業者へ相談するようにしましょう。
また、庇は材質によって特徴が異なりますので、それぞれの特徴を踏まえたうえで素材を選び、庇の後付けを検討されている方は、足場費用や建ぺい率にも注意するようにしましょう。