陸屋根は、勾配のないフラットな形状をした屋根で、ビルやマンションでは主流の形状です。近年ではそのスタイリッシュなデザインから戸建住宅でも人気となっています。
陸屋根では、降ってきた雨が溜まらないようにしっかりとした防水を施すことが重要です。
防水が機能していないと雨漏りなどのトラブルが起こってしまう可能性があるため、劣化状況に応じて適切なメンテナンスをおこなう必要があります。
このページでは、陸屋根の特徴やメンテナンス方法について紹介いたします。
陸屋根とは
陸屋根とは、勾配の無いフラットな形状をした屋根のことで、平らな屋根であることから「平屋根」や「フラット屋根」とも呼ばれています。
鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物、マンションなどで多く使われている屋根の形状で、近年ではスタイリッシュなデザインやコスト面から、木造一戸建て住宅でも採用されることが増えています。
陸屋根のメリット
陸屋根には他の屋根材に比べ以下のようなメリットがあります。
屋上として活用できる
陸屋根は、平らな形状をしているため、屋上やバルコニーとして活用することが可能です。そのため、土地の面積が少ない場合であっても、洗濯物干し場やガーデニングスペースなど様々な用途に利用できるというメリットがあります。
屋根メンテナンスが簡単・安価
屋根が平らな形状をしていることによって、掃除やメンテナンスがしやすいというメリットもあります。掃除やメンテナンスの際に作業がしやすく、足場も必要ないのでコストを抑えることもできます。
また、屋根を屋上として活用している場合には、施工の際に階段が設けられているため、業者に依頼しなくても自分たちで日頃の掃除や簡単な補修を行うことも可能です。
居室空間を広くできる
陸屋根には、屋根裏スペースが必要ないため、天井を高くすることができるので、一般的な勾配のある屋根に比べて室内の空間を広げることが可能です。
天井が高くなることで、居室内で開放感を感じることができます。
陸屋根のデメリット
陸屋根には、以下のようなデメリットも存在します。
水はけが悪い
陸屋根は、雨水を残さないようわずかな傾斜になってはいますが、一般的な勾配のある屋根に比べて水はけが悪いという特徴があります。
そのため、コケやカビが生えやすく、溜まった水によって雨漏りを引き起こしやすいので、丁寧な防水処理や定期的なメンテナンスなどの雨漏り対策が欠かせません。
屋根裏のスペースが確保できない
一般的な勾配のある屋根の場合、天井の高低差を利用して、最上階にロフトや収納スペースを確保することができます。
しかし、陸屋根の場合天井に高低差がないので、屋根裏に収納スペースやロフトを設置することはできません。収納を多く確保したい場合には、設計段階から設計者に相談し、別の場所にスペースをつくってもらう必要があります。
最上階の部屋の温度調整が難しい
陸屋根は、屋根裏スペースがないので、屋根に当たった太陽熱が直接天井に伝わります。そのため、最上階は夏は暑く、冬は寒くなりやすいという特徴があります。
室内の温度を快適に保つためには、直射日光が当たらないよう屋根にウッドデッキを設置したり、断熱材や断熱塗料を使用するなどの工夫が必要となります。
陸屋根防水の種類
陸屋根は、一般的な勾配のある屋根に比べ水はけが悪いため、雨漏りを防ぐためにはしっかりと防水工事を行う必要があります。
防水工事の種類には、主に「FRP防水」「ウレタン防水」「シート防水」「アスファルト防水」の4種類あります。それぞれの特徴は以下の通りです。
FRP防水
FRP防水は、強度が高く耐久性に優れたガラス繊維強化プラスチック(FRP)を床に敷き、その上からポリエステル樹脂を塗布して防水層を形成する工法です。
ガラス繊維強化プラスチックは、合成樹脂と補強材を混ぜ合わせたもので、軽量で衝撃に強く水密性、耐水性、耐候性などに優れている特徴があります。
FRP防水の耐用年数は8年〜10年程で、施工費用は1㎡あたり5,000円〜8,000円程度が相場となっています。
ウレタン防水
ウレタン防水は、液状化したウレタン樹脂を複数回塗布して防水層を形成する工法です。液状の防水材を使用するため、屋上、ベランダ、バルコニー等どんな形状の場所でも継ぎ目のない完全な防水層を形成できるという特徴があります。
また、工程が単純なので安価で工事日数も少なくて済むので、現在最も採用されることが多い工事方法です。ウレタン防水の耐用年数は10年〜12年程で、施工費用は1㎡あたり3,000円〜7,000円程度が相場となっています。
シート防水
シート防水は、シート状の防水材を貼り付けて防水層を形成する工法です。シートには「塩化ビニール製」と「ゴム製」の2種類があり、現在は塩化ビニール製が主流となっています。
シートを一気に貼って施工するため工期が短くて済みますが、施工場所にあわせてシートをカットしながら貼り付けていくため、複雑で凹凸が多い形状での施工は不向きです。
シート防水の耐用年数は10年〜15年程で、施工費用は、1㎡あたり4,000円〜7,000円程度が相場となっています。
アスファルト防水
アスファルト防水は、合成繊維不織布にアスファルトを含ませたシート状のルーフィングを貼り重ねて防水層を形成する工法です。
シート状のルーフィングを二層以上に仕上げているため、防水性や水密性が高く、他の工法に比べ耐久性が高いのが特徴です。ただ、工事方法が大掛かりで重量が大きく家に負担をかけてしまうため、屋上面積の広いビルやマンションに施工されることが多いです。
アスファルト防水の耐用年数は15年〜20年程で、施工費用は、1㎡あたり6,000〜9,000円程度が相場となっています。
陸屋根の劣化症状
陸屋根の代表的な劣化症状は以下の通りです。
排水口の詰まり
陸屋根には雨水を排水するために、屋根に排水口に向かってわずかに傾斜が付けられています。排水口には、雨水と一緒に落ち葉や泥、ゴミなども排水口に流れていくため、排水口に溜まった落ち葉や泥によって排水溝が詰まってしまうことがあります。
排水口の詰まりが原因であれば、詰まった部分を掃除することで解決することができますが、排水口の破損や歪みが起きている場合は修理が必要です。
また、排水口の詰まりをそのまま放置していると、雨水が外部に排水できずに滞留し、防水層の劣化を進行させてしまうため定期的に排水口の掃除を行うようにしましょう。
ひび割れ
陸屋根に施されている防水層は、経年劣化や衝撃などによって表面にひび割れが起こることがあります。
ひび割れの程度が、防水層の上に塗装されているトップコートのみであれば、症状は軽度なためそこまで心配する必要はありませんが、ひび割れから防水層の中まで水分が入り込むことによって防水層の劣化が進行してしまう恐れもあります。
また、防水層への浸水は雨漏りの原因にもなってしまうため、定期的なメンテナンスが必要となります。表面のトップコートの塗り替えは、一般的に5年に一度を目安に塗り替えを行うようにしましょう。
防水層の剥がれ・膨れ・浮き
経年劣化や防水層内部に入り込んだ水分によって防水層の剥がれや膨れ、浮きが起こることがあります。防水層の膨れは、亀裂や穴開きの原因にもなりますし、膨れによって排水管周りに亀裂が生じれば、漏水にもつながる恐れがあります。
防水層の剥がれや膨れ、浮きなどの症状がみられる場合は、防水機能が失われている状態のため、雨漏りを防ぐためにも、早急にメンテナンスを行う必要があります。
水溜りができている
屋根に水が溜まる原因としては、勾配不足が考えられます。
主に「施工不良」「建物の歪み」「地盤沈下」などの影響が考えられますが、その他にも排水口の周りに観葉植物などの物が置いてある場合には、落ち葉やゴミなどが排水口が詰まりやすく、詰まった異物が原因で水の排水を妨げてしまう場合もあるので注意が必要です。
水溜りができている状態をそのまま放置してしまうと、防水層の劣化やカビが繁殖してしまう恐れもありますので、早めに業者に相談をして勾配を調整するなどの対策を講じる必要があります。
陸屋根のメンテナンス方法と費用
陸屋根は、定期的なメンテナンスが必要です。陸屋根の修理やリフォーム方法は以下の3つの方法があり、ご予算や劣化状況によってメンテナンスの方法は異なります。
トップコート塗装
トップコートは、防水層の表面に塗装されており、塗装によってコーティングすることで紫外線や雨水から防水層を保護する役割があります。
トップコートの表面がざらついていたり、色褪せてきた場合にはトップコートの塗り替えを行うようにしましょう。 定期的に塗り替えを行うだけでも防水層を長持ちさせることができますので、5年に一度を目安に塗り替えを行うようにしましょう。
トップコート塗装の費用は防水層の種類によっても異なりますが、1㎡あたり1,500円〜3,000円程度が相場となります。
部分補修
ひび割れや破損が軽微な場合には、部分補修で問題のある箇所だけを補修することが可能ですが、部分補修の費用は、劣化状況や工法の種類などによって異なります。
傷みやすい排水口の補修(改修ドレン)やパラペットの補修や交換などの場合は、約10万円〜30万円程度が相場となります。
防水層の改修工事
ひび割れや破損が広範囲な場合や雨漏りが発生している場合には、防水層自体を作り直す必要があります。
防水層の改修工事では、「既存の防水層を撤去してから新たに防水層を形成する方法」と「既存の防水層の上から新しい防水層を被せる方法」の2種類があります。
工事内容は、劣化状況や雨漏りの有無などによって異なりますが、防水工事別の費用の相場は以下の通りです。
防水工事の種類 | 施工費用 | 耐用年数 |
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ウレタン防水 | 3,000円〜7,000円 | 10年〜12年 |
FRP防水 | 5,000円〜8,000円 | 8年〜10年 |
シート防水(塩ビ) | 4,000円〜7,000円 | 10年〜15年 |
アスファルト防水 | 6,000〜9,000円 | 15年〜20年 |
メンテナンスの流れ
トップコート塗装
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1.高圧洗浄
防水部分の長年のコケや、表面の汚れを高圧洗浄で落としていきます。施工後の不具合が起きないよう、入念に洗浄いたします。
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2.素地調整・ケレン・清掃
洗浄後の、表面のケレン・清掃をおこないます。清掃後は、アセトン等で油分の除去をおこないます。油分を除去することで塗料の密着力を高めます。
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3.下塗り/プライマー塗布
下地処理後に、プライマーを塗布いたします。浮き・剥がれ、施工後の密着不足にならないよう塗り重ねていきます。
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3.下塗り/プライマー塗布
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4.トップコート
プライマー施工後に、トップコートを塗布します。防水層を保護し、紫外線による劣化を防ぎます。
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5.完成
トップコートを塗布して完了となります。陸屋根部分は、勾配がないため防水層の定期的なメンテナンスが重要です。
防水層の改修工事
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1.既存シート防水撤去
シート防水の剥がれや・亀裂部分から雨水が侵入し、防水シートの密着性が失われ徐々に剥がれが進行していきます。
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1.既存シート防水撤去
シート防水がめくれてしまうと、下地に直接雨水が当たり下地が水分を含んでしまいます。当然、雨漏りのリスクは高くなります。早急に、メンテナンスが必要です。既存のシート防水を、カッター・スクレーパー等で撤去していきます。
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2.入隅シーリング・クラック補修
防水施工前に、下地の補修をおこなっていきます。
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2.入隅シーリング・クラック補修
立上りの入隅部分、平場のクラック部分に、シーリング補修をおこないます。
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2.入隅シーリング・クラック補修
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2.入隅シーリング・クラック補修
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3.下地調整/カチオンフィラー塗布
下地補修後は、下地調整をおこないます。
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3.下地調整/カチオンフィラー塗布
下地補修後は、下地調整をおこないます。
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3.下地調整/カチオンフィラー塗布
新しい防水層を作った際に既存塗膜が浮いてきてしまう可能性もあるため塗膜を塗る下地を綺麗にするための作業は重要です。
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4.下塗り/プライマー塗布
下地との密着力を高めるため、プライマーを塗布いたします。下地作りがとても重要なので、丁寧に塗り重ねていきます。
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5.主剤(フローン)塗布1回目
主剤をながして、ウレタン塗膜形成をおこないます。
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5.主剤(フローン)塗布1回目
塗膜防水のデメリットは、塗料の塗っていくうえで工程ごとの乾燥時間が必要で1日にできる作業が制限されてしまいます。メリットとしては、シート防水の雨漏りのリスクともなる結合部が存在しないことです。
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6.主剤(フローン)塗布2回目
主剤2回目を塗布していきます。塗り重ねをおこない所定の厚さにしていきます。密着工法は、直接下地に塗り重ねるため、下地の影響を受けやすく、下地調整が重要です。下地の調整が不十分な場合、防水層のひび割れや膨れが発生しやすくなります。
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7.トップコート塗布
仕上にトップコートを塗布します。ウレタン防水の弱点は、紫外線に弱いことです。そのため防水層を保護する、トップコートをおこないます。
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7.トップコート塗布
トップコートにも耐用年数がございます。防水層を保護するためにも定期的なメンテナンスをお勧めいたします。
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