屋根工事では、ルーフィングと呼ばれる防水シートが使用されます。
実際に目にする機会は少ないかと思いますので、防水シートについて詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
屋根工事で使う防水シートは、家を守るための重要な役割を果たしているため、防水シートについて理解しておくことはとても大切です。
このページでは、防水シート(ルーフィング)の役割や防水シートの種類などについて説明しています。
目 次
屋根の構造
まずは防水シートがどこに施されているものなのか、屋根の構造について説明いたします。
屋根は基本的に屋根材、防水シート、野地板の3層構造になっています。
屋根材とは、スレートやガルバリウム鋼板、瓦など一般的に屋根と聞いてイメージできる部分を指します。
そして、防水シートは屋根材の下に敷かれており、その下には野地板と呼ばれる部材が取り付けられています。
また屋根の防水効果は、屋根材と防水シートが正しく機能することによって発揮され、防水に関する専門用語で屋根材のことを「一次防水」、防水シートを「二次防水」と呼びます。
防水シート(ルーフィング)の役割
防水シートには、屋根材の隙間から入り込んだ雨水が屋根の下地材にまで浸透するのを防ぎ、内部に浸入した雨水を外へ排水する役割があります。
下地材は木材のものがほとんどなので、水が染み込むと腐食やシロアリの発生など引き起こし、建物全体の耐震性にまで影響を及ぼします。
防水シートが施工されていれば、台風や暴風雨の時に屋根材の隙間から雨水が浸入したり、屋根材の一部が破損していてもすぐに雨漏りすることはありません。
雨漏りが発生する原因
防水シートにも寿命があるため、防水シートに劣化や破損などが起きていると雨水が建物内部に浸入し、最終的に雨漏りが発生します。
また、屋根材のメンテナンスを怠ると、防水シートが紫外線や雨風、飛来物などの影響を受けやすくなり、防水シート自体の劣化も早めてしまうことになります。
防水シートの劣化に気づく頃には、すでに雨漏りが起きている可能性が高いので、まずは防水シートを守るためにも定期的に屋根材のメンテナンスを行うことが大切です。
防水シート(ルーフィング)の種類とそれぞれの特徴
防水シートの種類は主に6つあります。それぞれメリット・デメリットがありますので、屋根工事の際は防水シートの種類もチェックしておくと安心です。
アスファルトルーフィング
耐用年数:約10年
アスファルトルーフィングとは、板紙と呼ばれる厚手の紙にアスファルトを染み込ませて作られたシートです。防水シートの中では、最も一般的な種類になります。
メリット | ・価格が安い ・止水性に優れている |
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デメリット | ・耐久性が低いので、こまめなメンテナンスが必要 ・破れやすい ・浸透性低く、野地板に結露ができやすい |
改質アスファルトルーフィング
耐用年数:約25年
改質アスファルトルーフィングは、上記のアスファルトルーフィングの質を向上させたものです。「ゴムアスルーフィング」と呼ばれることもあります。
改質アスファルトルーフィングの場合、アスファルトにポリマーや合成ゴムを混ぜ合わせて作られているため、アスファルトルーフィングに比べて耐久性に優れています。
さらに、改質アスファルトルーフィングには自己接着性があり、伸縮性も高い特徴もあります。
ルーフィングを固定する時はタッカーと呼ばれる工具で固定するため、ルーフィング自体に穴を開けることになります。
その際、アスファルトルーフィングの場合は生じた穴から水が浸入するリスクがありますが、改質アスファルトルーフィングであればタッカーとシートがしっかりと密着するので、水の浸入を防ぐことができます。
メリット | ・耐久性が高い ・止水性に優れている ・温度変化による影響を受けにくいので、経年劣化が少ない |
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デメリット | ・アスファルトルーフィングに比べて価格が高い ・浸透性低く、野地板に結露ができやすい |
粘着ルーフィング
耐用年数:約25年
粘着ルーフィングとは、改質アスファルトルーフィングの裏が粘着シートになっている種類になります。基本的な性能や耐用年数は、改質アスファルトルーフィングと同じです。
粘着ルーフィングの場合、固定する際にタッカーで穴を開ける必要がないので作業時間が短縮でき、さらに隙間から雨水が入り込む心配もありません。
また、屋根のカバー工法を行う時は、粘着ルーフィングを使用することが多いです。
なぜなら、カバー工法の場合、既存の屋根材の上に防水シートを設置する必要があり、粘着ルーフィングであれば屋根材に直接貼り付けることができるからです。
メリット | ・穴を開けずに施工できるので、防水性に優れている ・傷んだ屋根材の上からでも貼り付けることができる ・耐久性が高い |
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デメリット | ・価格が高い ・浸透性がないので、湿気を逃がしにくい |
高分子系ルーフィング
耐用年数:約15年
アスファルトを使用しないシートことを高分子系ルーフィングと言います。
現在は塩化ビニル製のものが主流となっており、アスファルトを使わないでの軽量であるという特徴があります。
メリット | ・価格が安い ・軽量なので屋根への負担を軽減できる ・伸縮性が高く、破れにくい |
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デメリット | ・下地の状況や形状によっては施工できない ・紫外線の影響を受けやすい |
透湿ルーフィング
耐用年数:約50年
透湿ルーフィングとは、室内の湿気を逃がす性質がある防水シートのことです。
内部の湿気は逃がし、外部からの水は通さないという特徴があります。また、野地板の腐食や結露の発生を防げるので、建物内部が劣化するのを抑える効果もあります。
メリット | ・耐久性が非常に高い ・透湿性に優れている |
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デメリット | ・価格が高い ・施工の際は高い技術力が必要 |
基材不織布ルーフィング
耐用年数:約30年
基材不織布ルーフィングとは、ベースに板紙ではなく、不織布を使用したものになります。
紙ではないので破れにくく、屋根の形状にも合わせやすいメリットがあります。また、扱いやすいので、他の防水シートに比べて職人の腕に左右されにくいのも特徴です。
メリット | ・破れにくい ・耐久性が高い ・柔軟性があり、あらゆる形状に屋根に対応できる |
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デメリット | ・価格が高い |
防水シート(ルーフィング)の貼り方
防水シート(ルーフィング)を貼るときの手順は以下の通りです。
1.防水シート(ルーフィング)を貼る
まずは軒先(屋根の下部)から順に、棟先(屋根の上部)に向かって防水シートを貼り付けていきます。
この際、シートとシートの間に隙間があると雨水が入り込んでしまう恐れがあるため、20cm程重ねて貼り付けます。
また、棟や谷樋などは雨の影響を受けやすく、雨漏りが発生しやすい部分になるので、シートをさらに重ね張りして補強します。
2.防水シート(ルーフィング)を固定する
防水シートを固定する際は、一般的にタッカーと呼ばれる工具を使用します。タッカーとは大きなホッチキスのようなもので、防水シートに打ち付けて留めていきます。
注意点として、タッカーを打ち込む作業は高い技術が必要で、タッカーが浮いていたり、強く打ち込みすぎたりすると、防水シートが傷んでしまう原因になってしまいます。
タッカーを打った部分にできる穴は、防水シートが太陽の熱によって溶けることで塞がるため、基本的に問題はありません。
まとめ
防水シート(ルーフィング)は、屋根材の下に敷かれており、雨水が内部に浸入するのを防いで外に排水する役割があります。
もし破れや破損などが発生していたり、耐用年数が過ぎていたりしていると雨漏りに繋がる恐れもあるので注意が必要です。
また、防水シートには数種類あり、それぞれ耐用年数や単価も異なります。
たとえ耐久性の高い屋根材を使用したとしても、防水シートの耐用年数が短ければ雨漏りする可能性があるため、屋根工事を依頼する際は使用する防水シートについても確認しておくことが重要です。