屋根は、常に紫外線や雨風にさらされているため、月日の経過とともに様々な劣化症状が現れます。しかし、屋根は下から見ることができないので、異変に気づくのが遅れてしまうというケースも少なくありません。
屋根のメンテナンスには適切なタイミングがあり、その時期をのがしてしまうと修理費用がかさんだり、家全体の耐久性が落ちてしまったりする恐れもあります。
ただ、適切なタイミングで修理を行うことで、住宅を長持ちさせることもできますので、事前に修理の方法やタイミングを知っておくことが大切です。
このページでは、屋根の修理方法や適切な修理のタイミングなどについて説明いたします。
目 次
屋根修理の必要性
屋根には、建物の中に住む人や構造体を紫外線や雨風から守るという重要な役割がありますが、刺激をダイレクトに受け続けているため、徐々にダメージが蓄積していきます。
そのため、屋根の健康状態を保つためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。屋根の劣化が進行してしまうと、雨漏りや構造体まで被害が及んでしまう恐れもあります。
そのまま放置してしまうと建物の寿命を縮めることになってしまうため、適切なタイミングでメンテナンスを行い被害を最小限に抑えることが大切です。
また、症状が深刻化する前にメンテナンスを行うことで、修繕コストの節約にも繋がります。
【屋根材別】屋根修理が必要な修理時期の目安
屋根材は大きく分類すると、以下の4種類に分類され、屋根材の種類や立地や環境によって耐久年数は異なります。
スレート屋根(コロニアル・カラーベスト)
スレート屋根は、セメントに繊維質を混ぜ合わせたものや、粘板岩と呼ばれる石を材料として作られた板状の屋根材です。
約10年を目安に塗装が必要となり、屋根材や下地の劣化が激しい場合は、塗装ではなくカバー工法または葺き替えを行うことになります。
またスレート屋根の場合、屋根の一番高い位置に棟板金という金属製の部材が取り付けられており、棟板金の劣化が進行すると雨漏りに繋がる恐れがあるため、屋根材だけではなく板金のメンテナンスも必要となります。
よくある劣化症状とメンテナンス方法は以下の通りです。
劣化部分 | 症状 | メンテナンス方法 |
---|---|---|
塗装面 | ・色褪せ ・コケや藻 ・チョーキング ・ひび割れ ・剥がれ |
屋根材そのものではなく塗膜の劣化のみの場合は、塗り替えを行います。 |
屋根材 | ・ひび割れ ・ズレ ・ゆがみ ・浮き ・反り ・破損 |
軽度なひび割れであれば、コーキング処理で部分補修を行います。 ひび割れの範囲が大きかったり、反りや破損などが見られる場合は、屋根材を差し替えます。 |
板金部分 | ・色褪せ ・チョーキング ・板金の浮き ・釘の浮き |
色褪せやチョーキングが見られる時は塗り替えを行います。 板金の浮きや釘の浮きが起きている場合は、板金の交換工事を行います。 |
スレート屋根の詳細は以下のページから確認できます。
スレート屋根とは
金属屋根
金属屋根は、銅板や鉄板を主な材料とした屋根材で、ガルバリウム鋼板やトタン、銅板などといった種類があります。
基本的に銅板以外は定期的なメンテナンスが必要となり、ガルバリウム鋼板は15〜20年、トタンは7〜10年を目安に塗装を行う必要があります。
また、屋根材や下地の劣化が激しい場合は、カバー工法または葺き替えを行うことになります。
よくある劣化症状とメンテナンス方法は以下の通りです。
劣化部分 | 症状 | メンテナンス方法 |
---|---|---|
塗装面 | ・色褪せ ・サビによる変色 ・チョーキング ・ひび割れ ・剥がれ |
屋根材そのものではなく塗膜の劣化のみの場合は、塗り替えを行います。 |
屋根材 | ・サビ ・穴が開く ・ゆがみ ・浮き ・傷 |
サビの範囲が狭い場合は、サビの除去をしてから塗装します。また、小さめの穴であればコーキング処理による部分補修も可能です。 サビや穴の範囲が大きかったり、ゆがみや浮きがある場合は屋根材を差し替えます。 |
金属屋根の詳細は以下のページから確認できます。
ガルバリウム鋼板屋根の特徴と修理・交換費用
トタン屋根の特徴と修理・交換費用
瓦屋根
瓦屋根とは、セメントや粘土などを材料として作られた屋根材で、厚形スレート瓦やコンクリート瓦、日本瓦といった種類があります。
瓦屋根であれば、瓦1枚から交換することができますが、瓦は非常に重く、メンテナンスを怠ると落下する危険性もあるので注意しましょう。
厚形スレート瓦やコンクリート瓦は7〜10年を目安に塗り替えを行います。
屋根材や下地の劣化が激しい場合は、葺き替えを行うことになります。瓦屋根は重量があり、上からさらに屋根材を被せてしまうと耐震性に影響がでるため、カバー工法は行えません。
日本瓦は基本的にメンテナンスフリーですが、他の瓦同様に下地が耐用年数を迎えた際には葺き直しが必要となります。また、瓦屋根は漆喰が施されているので、漆喰のメンテナンスも重要です。
よくある劣化症状とメンテナンス方法は以下の通りです。
劣化部分 | 症状 | メンテナンス方法 |
---|---|---|
塗装面 | ・色褪せ ・コケや藻 ・チョーキング ・ひび割れ ・剥がれ |
屋根材そのものではなく塗膜の劣化のみの場合は、塗り替えを行います。 |
屋根材 | ・ひび割れ ・ズレ ・破損 |
軽度なひび割れであればコーキング処理による部分補修を行います。 ズレは瓦を並べ直す「積み直し」と呼ばれる作業で対応します。 劣化が激しい場合や破損が見られる際は、部分的に瓦を交換します。 |
漆喰部分 | ・剥がれ ・崩れ ・ひび割れ |
漆喰が劣化している場合は、既存の漆喰を撤去してから、新しい漆喰を塗装します。 |
瓦屋根の詳細は以下のページから確認できます。
日本瓦の特徴と修理・交換費用
セメント瓦・モニエル瓦屋根の特徴と修理・交換費用
アスファルトシングル
アスファルトシングルとは、アスファルトをコーティングした不燃布やガラス繊維の上に、細かい石粒や砂を施した屋根材です。
アスファルトシングルは7〜10年を目安に塗装が必要となり、屋根材や下地の劣化が激しい場合は、カバー工法または葺き替えを行うことになります。
よくある劣化症状とメンテナンス方法は以下の通りです。
劣化部分 | 症状 | メンテナンス方法 |
---|---|---|
塗装面 | ・色褪せ ・コケやカビ ・チョーキング ・ひび割れ ・剥がれ |
屋根材そのものではなく塗膜の劣化のみの場合は、塗り替えを行います。 |
屋根材 | ・剥がれ ・浮き ・石粒や砂の剥がれ |
剥がれや浮きの範囲が狭ければ、既存のアスファルトシングルを接着し直す方法で補修します。 状況が悪化している場合は、部分的に新しいものを張り直す必要があります。 |
アスファルトシングルの詳細は以下のページから確認できます。
アスファルトシングル屋根の特徴と修理・交換費用
屋根のリフォームやメンテナンスが必要な劣化症状
塗装の色あせや剥がれ
塗装が施されている屋根材では、経年劣化によって塗装の色あせが起ります。劣化の初期症状なので、急いで対処しなければいけないという訳ではありません。
ただ、塗装の防水機能が低下している状態なので注意が必要です。また、塗装が剥がれている部分は屋根材を保護することができませんので、塗り替えを検討する必要があります。
苔・藻・カビの発生
塗装の色あせによって防水機能が低下すると、水はけが悪くなり苔や藻、カビが繁殖しやすい状態になります。
苔や藻などが生えると屋根は常に水を含んだ状態になってしまい、屋根材自体の劣化を早めてしまう恐れがあります。また、そのまま放置してしまうと屋根材だけではなく屋根の内部まで腐ってしまう恐れもあります。
棟板金の破損・釘の浮き
スレート屋根や金属屋根などの場合、屋根の棟(最頂部)に棟板金(むねばんきん)と呼ばれる屋根の棟部を覆う板金が取り付けられています。
棟板金は雨風の影響を非常に受けやすく、強風などによって板金がズレたり剥がれてしまう場合があります。また、固定している釘も気温の変化や水分の影響などによって7〜8年程度経つと釘浮きが起こるようになります。
棟板金に破損や釘浮きによってできた隙間から雨水が入り込むことで雨漏りが発生します。劣化が進行すると、棟板金の中にある貫板と呼ばれる木材にまで雨水が入り込み腐朽してしまう恐れがあります。
雨樋の詰まり・破損
雨樋には、屋根に降った雨を地上や下水に排出するという役割がありますが、正しく排水できないことが原因となり雨漏りが発生する場合があります。
雨樋に、ゴミや落ち葉などが詰まったり、雨樋のひび割れや外れ、雨樋の歪みや勾配不良などの不具合が生じると、雨水がオーバーフローを起こし想定していない箇所に雨水が流れ込んで雨漏りを引き起こしてしまう恐れがあります。
屋根材の浮きや割れ
屋根は建物の中でも特に、紫外線や雨風の影響を受けやすいため、根材の劣化や飛来物などによる外部の衝撃によって、屋根材の浮きや割れなどが起こる場合があります。
屋根材が浮いたり割れることで、隙間から水が浸入し雨漏りに発展する恐れがあります。
季節ごとに点検を!注意したいポイント
屋根修理の適切なタイミングを見極めるためには定期的な点検が重要です。ここでは、季節ごとに気をつけたいポイントをご紹介します。
また、屋根の点検は目視で行える範囲で十分です。屋根にのぼるのは危険ですので絶対にやめましょう。
春
■3・4月
6月の本格的な梅雨のシーズンが到来する前に、屋根に不具合がないか一度建物全体の点検を行いましょう。
■5・6月
雨が降った後に、雨樋が正常に排水できているか確認しましょう。雨樋の耐用年数は、15〜20年と言われていますが、経年劣化や自然災害によって歪みや破損が生じる場合もあります。
雨が止んでも雨樋に雨水が溜まっていたり、不具合が生じている場合には専門の業者に点検を依頼するようにしましょう。
夏
■7月
台風が近づくシーズンです。屋根材のズレや浮き、棟板金の釘にゆるみがないか確認しましょう。
屋根材や棟板金がしっかり固定されていないと、強風によって屋根材が外れて飛散してしまい、飛散した屋根材が人に当たってケガを負わせてしまう恐れもあります。
台風で大きな被害を出さないために、台風がくる前には必ず建物の状態をチェックしましょう。
■8・9月
台風が通過した後は、屋根に被害が生じていないか確認をしましょう。建物に破損した部分はないか、敷地内に落下物がないかしっかりと確認するようにしましょう。
秋
■10・11月
秋は、落葉の季節です。落ちた落ち葉が雨樋に溜まり、詰まってしまうと雨水がうまく排水できずトラブルの原因となってしまう恐れがあります。
雨樋に溜まった落ち葉は、腐葉土化すると草や苔が生えてしまう場合もあるので、業者に依頼して雨どいの掃除を行いましょう。
冬
■12月
雪が降る前に、屋根の雪止めがしっかりと固定されているか確認しましょう。寒冷地の場合は、秋の時期から早めに点検しておくと安心です。
また、ひび割れた部分は水分が吸収しやすい状態になりますので、屋根材にひび割れがないかしっかりと確認するようにしましょう。
氷は水よりも体積が10%程度大きくなり、暖かくなると水に戻ります。屋根材に水分が染み込み膨張と収縮を繰り返すことで、ひび割れや欠損といった症状につながります。この現象のことを凍害と呼びます。
■1・2月
凍害による被害がないか確認しましょう。特に寒冷地域では、被害が発生しやすいので注意しましょう。
築年数からみる屋根のメンテナンス時期
築10年前後
新築から10年前後経過したら、塗り替えを検討する時期です。屋根は、常に紫外線や雨風にさらされているため、建物の中でも劣化が進行しやすい箇所です。
屋根の場合、一般的に広く使用されているシリコン樹脂塗料の耐用年数は10〜15年と言われていますが、立地条件などによっては8〜10年ほどしかもたない場合もあります。
そのため、屋根の防水性を維持するためには、塗料の耐用年数を迎える前に塗り替えを行い、屋根材を保護する必要があります。
塗装の必要がない日本瓦以外の屋根材では、築10年を目安に塗り替えによるメンテナンスを検討しましょう。
築20~25年
築20年を過ぎると、屋根の下地材や防水シートの耐用年数が近づく頃なので、葺き替えや屋根カバー工法を検討されることをおすすめします。
信頼できる専門業者に屋根点検を依頼し、今後のライフプランも考慮しながら、塗装や補修で済ませるか葺き替えやカバー工法をすべきかアドバイスを受けると安心です。
耐久性の高い日本瓦は、素材に問題がなければ再利用して葺き直しで対応することも可能ですが、築20年を経過している場合には、下地の交換・補修を検討するようにしましょう。
築30年前後
築30年を過ぎたらいよいよ建物の全体的なリフォームを検討する時期です。屋根の葺き替えやカバー工法を検討しましょう。
屋根修理にかかる費用の相場
屋根修理で行う工事内容と費用の相場は以下の通りです。
工事内容 | 工期 | 費用相場 |
---|---|---|
コーキング補修 | 半日〜1日程度 | 2〜7万円程度 |
テープ補修 | 半日〜1日程度 | 2~4万円程度 |
屋根の差し替え | 1日程度 | 4〜20万円程度 |
棟板金の交換 | 2~4日程度 | 20~30万円程度 |
瓦の葺き直し | 7〜10日程度 | 20〜50万円程度 |
漆喰の修理・交換 | 2~4日程度 | 10~20万円程度 |
棟瓦の積み直し | 1~3日程度 | 10,000円〜20,000円/m |
谷樋板金の交換 | 2〜3日程度 | 6〜12万円 |
雨どいの部分補修 | 数時間~1日程度 | 数千円~1万円程度 |
雨どいの全部交換 | 1~3日程度 | 10~30万円程度 |
野地板の増し張り | 1~2日程度 | 1,500~3,000円/㎡程度 |
野地板の張り替え | 2~3日程度 | 3,000~4,000円/㎡程度 |
屋根塗装 | 10~15日程度 | 2,400~4,500円/㎡ |
屋根カバー工法 | 6~8日程度 | 12,000円/㎡~ |
屋根葺き替え | 7~10日程度 | 12,000円/㎡~ ※廃材処分費に20万円程かかります。 |
足場組立 | 1日程度 | 550~800円/㎡~ |
屋根修理のポイントと注意点
自分で屋根に登って点検するのは危険
ご自身で屋根に登って状態を確認するのは事故に繋がる可能性もあり、非常に危険です。
また、DIYは屋根から落下する危険性だけではなく、間違った方法で補修をして状態を悪化させてしまう恐れもありますので、屋根の構造を理解しているプロの業者に任せるようにしましょう。
専門業者選びのポイント
業者を選ぶ際には、目視だけではなく実際に屋根に登って、細部までしっかりと点検をしてくれる業者を選ぶようにしましょう。
屋根の劣化状況によって、ドローンやカメラを使って確認したり、注意点について丁寧な説明がある業者であれば安心です。
ただ、悪質な業者の中には、わざと屋根を傷つけて写真を撮り、故意に工事が必要な状況を作ろうとする業者も存在しますので、業者が点検を行う際には必ず立会いを行い、不審な点はないか注意するようにしましょう。
悪徳業者には要注意!
屋根修理は、悪徳業者による「詐欺被害」の標的になりやすいリフォーム工事の一つです。
特に訪問販売業者によるトラブルが多発しているため、飛び込みの業者が来ても相手にしないようにすることが重要です。もちろん全ての訪問販売が悪徳業者だというわけではありません。
ただ、被害に遭うリスクは格段に高くなるため「外から屋根の不具合が見えた」「無料で点検します」「今だけのキャンペーン」などと突然来た訪問業者に言われたとしても、安易に屋根に登らせたりその場で契約はしないでください。
一度業者からもらった名刺を確認して会社を調べたり、他社との見積もりを比較するようにしましょう。
まとめ
屋根は日頃から雨風や紫外線、地震による揺れといった様々な影響を受けることで劣化が進行します。
屋根の劣化が進行してしまうと、雨漏りや構造体まで被害が及ぶ恐れもありますので、定期的に点検を行い適切なタイミングでメンテナンスを行うことが大切です。
重t苦を長持ちさせるためにも、自然災害後や、1シーズンごとに目視で屋根の状態を確認し、10年に1度は修理などのメンテナンスを行うことをおすすめします。