セメント瓦は、陶器瓦より価格が安く製造しやすいため、高度経済成長期の1970年から1980年代に国内で広く普及した屋根材です。
モニエル瓦はセメント瓦の一種で見た目も非常に似た屋根材ですが、他のセメント瓦と塗装方法が異なるため注意が必要となります。
このページでは、セメント瓦やモニエル瓦屋根の特徴やメンテナンス方法について紹介いたします。
目 次
セメント瓦とは
セメント瓦は、セメント、砂利や砂、水を混ぜ合わせて作られたモルタルの瓦です。プレスセメント瓦や厚形スレート瓦と呼ばれることもあります。
ほとんどのセメント瓦は塗料で着色されており、形状も様々なものがあるので、豊富なバリエーションの中から選ぶことができます。
モニエル瓦とは
モニエル瓦は、セメント瓦と同じ原料で作られていますが、セメント瓦に比べてセメントの量が少ない瓦になります。正式には「乾式コンクリート瓦」と言い、コンクリート瓦と呼ばれることもあります。
また、モニエル瓦の表面には、着色スラリーという着色剤が厚めに塗られており、このスラリー層によって防水性を高められるといった特徴もあります。
1973年から日本モニエル(ラファージュルーフィング株式会社)という会社が代理店として扱っていましたが、2010年にメーカーが解散したため、現在は生産終了しています。
セメント瓦とモニエル瓦の見た目の違い
セメント瓦とモニエル瓦は、セメントを主成分とした屋根材で、モニエル瓦はセメント瓦の一種として扱われており、見た目も非常に似ていますが、断面の小口を確認することで見分けることが可能です。
セメント瓦の場合は、小口部分が凹凸のない滑らかな仕上がりになっているのに対し、モニエル瓦の小口部分は、凹凸のあるザラザラとしているのが特徴です。
セメント瓦・モニエル瓦のメリット
カラーバリエーションが豊富
セメントを原料としているため加工しやすく、和型や洋型など様々な形状から選ぶことができ、表面が塗装で着色されているため、豊富なバリエーションの中から選ぶことができるというメリットがあります。
耐火性に優れている
セメント瓦やモニエル瓦は、セメントと川砂を原料としているため可燃物が含まれていません。そのため、火事の際に住宅が燃え広がるスピードを緩めてくれるというメリットがあります。
遮熱性、防音性に優れている
セメントを原料とするセメント瓦やモニエル瓦は、金属屋根やスレートに比べ熱や音が伝わりにくいため、遮熱性や防音性に優れているという特徴もあります。
セメント瓦・モニエル瓦のデメリット
耐震性が低い
セメント瓦やモニエル瓦は、他の屋根に比べてどうしても重くなってしまうというデメリットがあります。セメント瓦やモニエル瓦は、1坪あたり約144〜148Kgほどの重さがあります。
近年主流となっている、スレート屋根では1坪あたり約68kg、金属屋根では、1坪あたり約15kg程度におさまるため、他の屋根材と比較すると2倍〜10倍近くも重量が大きいという特徴があります。そのため、屋根が重くなり重心が高くなることで、揺れや強い風が吹いた際の建物への負担が大きくなってしまうというデメリットがあります。
コケやカビが生えやすい
水を吸いやすいセメントを主材料としているため防水性が低く、表面を保護している塗装が劣化するにつれてコケや藻が発生しやすくなります。特にコケが良く育つ条件となる「適度な日光・水分」が揃う北面では、増殖しやすいので注意が必要です。
また、コケや藻は水分を含みやすく、屋根が常に湿っている状態になってしまいます。その水分が固まったり溶けたりを繰り返すことによって、スレートの割れに繋がる可能性もあります。
定期的にメンテナンスが必要
セメント瓦やモニエル瓦自体は防水性の低い屋根材のため、表面に塗装をすることで防水性を保っています。
紫外線や風雨により表面の塗膜が劣化することによって防水性が低下してしまうため、10年程度を目安に塗装による定期的なメンテナンスが必要になります。
セメント瓦・モニエル瓦の劣化症状
色褪せ・変色
表面に施された塗装が紫外線や風雨によって劣化することで、色褪せや変色の症状がみられるようになります。
瓦が色褪せや変色している場合は、塗膜が劣化し防水機能が低下しているため、根自体が水分を吸収しやすい状態になってしまうため、塗り替えをして瓦の表面を保護する必要があります。
塗膜が劣化してしまうと、雨水が瓦自体に染み込むようになってしまうため、早めに塗装をして瓦を保護することが大切です。
瓦のひび割れ・欠け
瓦に強風で何か硬いものが衝突したり、水分を吸収し膨張した瓦が乾燥することで収縮する、または、凍結と融解を繰り返すなどによって、ひび割れたり欠けてしまうことがあります。
ひび割れや欠けた部分から内部に雨水が浸入することで、漆喰の劣化や雨漏りに繋がる恐れがあるため、早急なメンテナンスが必要です。
瓦は、部分的な瓦の差し替えが可能となりますが、可能ですが、既に廃盤になっている製品も多いため、同じものに交換することができない場合があるため注意が必要です。
瓦のズレ
地震による振動や台風などの強風の影響を受け、瓦が動いてずれてしまうことがあります。
瓦がずれてしまうことで隙間が生じ、その隙間から雨水が浸入してしまう恐れがありますので、早めに業者へ点検を依頼し、ずれを直す必要があります。
また、瓦がズレて不安定な状態のまま放置していると、瓦が落下し思わぬ事故に繋がる危険性もあるので注意が必要です。
漆喰の崩れ・剥がれ
瓦を固定している漆喰が経年劣化によって崩れたり、剥がれてくるようになります。そのため、漆喰の定期的なメンテナンスが必須となります。
ただ、漆喰が剥がれたとしても、下地の土が水分の浸入をある程度防いでくれるので、漆喰が剥がれてきても、すぐに雨漏りにつながるようなものではありません。
しかし、雨水の浸入や瓦のズレ、落下など様々なトラブルに発展する恐れもあるため、瓦の劣化が見られない場合でも、定期的に点検と補修を行うようにしましょう。
セメント瓦・モニエル瓦屋根のメンテナンス方法と費用
漆喰の修理
漆喰に崩れや剥がれが起きている場合は、漆喰を塗り増しするかい漆喰を取り除いてから新たに漆喰を埋め直す必要があります。
また、漆喰が完全に取れてしまい棟部分の劣化が進んでいるなら、棟そのものを修理した方がいいケースも劣化状況によって、必要となる工事が異なります。
漆喰の塗り直しにかかる費用は、1mあたり5,000円~10,000円が相場です。
塗装
瓦の塗装に劣化がみられる場合には、塗り替えをします。塗り替えをすることで、塗膜が表面をコーティングし、瓦自体に水分が染み込むのを防ぐことができます。
水分を吸収してしまうと、瓦の強度が一気に低下してしまうため、出来るだけ長く保たせるためにも、7〜10年を目安に定期的な塗り替えをオススメします。
ただ、モニエル瓦を塗装する場合には注意しなければならない点があります。それは、着色スラリーという着色剤がモニエル瓦の表面に施されているという点です。
この着色スラリーを除去せずに塗装をすると、直ぐに塗膜が剥がれてしまうため、塗装の前に着色スラリーを除去する必要があります。
セメント瓦・モニエル瓦の塗装にかかる費用は使用する塗料にもよりますが、一般的な戸建て住宅の場合で30万円~70万円程が相場となります。
葺き替え
葺き替えとは、既存屋根を全てはがし、屋根そのものを全て新しいものに葺き替える工法です。瓦や漆喰だけでなく、屋根の下地材まで劣化してしまった場合には、屋根の葺き替えが必要になります。
また、セメント瓦やモニエル瓦は、1970〜80年代に流行した屋根材で、現在では既に廃盤になっている製品も多いため、葺き替えによるメンテナンスをおこなう方が増えています。
葺き替えの際には、軽量なガルバリウム鋼板やエスジーエル鋼板などの金属屋根を選択される方が多くなっています。
セメント瓦・モニエル瓦の葺き替えにかかる費用は、新たに使用する屋根材によって異なりますが100~250万円が相場となっています。