自然災害の多い日本では、春や秋には上空に強い寒気が流れ込んで大気の状態が不安定になることによって、激しい雨や雷とともに雹が降ることがあります。
このページでは、雹がもたらす屋根への被害や修理方法、火災保険が利用できる条件や申請方法について紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
雹(ひょう)とは
雹とは、積乱雲から地上へ降る直径5mm以上の氷の塊のことで、直径が5mm未満のものは「あられ」と呼ばれています。
始めは小さな氷の結晶ですが、積乱雲のの中で入り乱れている強い上昇気流と下降気流によって、小さな氷の結晶はなかなか下に落ちることができず、周囲の水や氷の粒が付着して、雹やあられに成長します。
通常氷の粒は、落ちてくる間に溶けて雨に変わりますが、雹やあられに成長した氷の粒は、上空で溶けきらずに氷のまま地表に落ちてくるのです。
雹は、大きければ大きいほど落下速度は速く、直径5cmともなると落下速度は時速100kmを超えると言われています。そのため、雹の大きさによっては車や建物が破損したり、大きな事故に繋がる可能性があり注意が必要です。
雹による屋根への被害
屋根の破損
雹による代表的な被害のひとつが屋根材の破損です。雹がぶつかった衝撃によって屋根材が割れたり、穴が開いてしまうとその部分にできた隙間から雨水が浸入して、屋根内部の下地が腐食や雨漏りに繋がる恐れがあります。
また、破損した屋根材が落下したり、強風によって飛散してしまうと、周りの建物や車などを傷つけてしまったり、通行人にぶつかってしまえば大怪我を負ってしまう可能性もあり大変危険です。
特に、スレート屋根や瓦屋根はひび割れを起こしやすいので、雹が降った後は屋根に異常が起きていないか注意する必要があります。
屋根のへこみ
ガルバリウム鋼板やトタンなどの金属屋根では、雹がぶつかった衝撃で屋根材がへこんでしまうといった被害もよくみられます。
屋根材がへこんでしまうと、その部分からサビが徐々に広がり最終的には穴をあけてしまいます。屋根材に穴が開いてしまえば、その隙間から雨水が浸入して、屋根内部の下地が腐食や雨漏りに繋がる恐れがあります。
近年は、軽量で耐久性に優れたガルバリウム鋼板を屋根材に使用した住宅も増えてきていますが、ガルバリウム鋼板は傷やへこみが起きやすいというデメリットもあるので注意が必要です。
塗膜の劣化
雹の衝撃によって、屋根材を保護している塗膜が剥がれてしまうことで、塗膜の剥がれた部分から屋根材自体に雨水が染み込んで劣化を早めてしまうことがあります。
また、板金に雹が当たると雹痕と呼ばれる染みのような跡ができます。雹痕ができた場所は、板金を保護するため塗膜が薄くなりサビが発生しやすくなっています。
そのため、サビが発生して屋根材自体の耐久性が低下してしまう前に、塗り替えなどで補修を行う必要があります。
塗膜の剥がれは美観を損なうだけではなく、塗料本来の耐久性が維持できなくなることで想定よりも劣化のスピードを早めてしまう可能性もあるので、定期的に点検をして症状が深刻化すう前にメンテナンスを行うことが大切です。
棟板金の破損
スレート屋根や金属屋根などは、屋根の棟(最頂部)に棟板金(むねばんきん)と呼ばれる屋根の棟部を覆う板金が取り付けられています。
雹が棟板金に当たることで、傷やへこみ、板金のズレ、塗膜の劣化などの被害が生じることで、屋根内部に雨水が入り込み雨漏りが発生してしまいす。
このような状態になってしまうと、棟板金の中にある貫板と呼ばれる木材にまで雨水が入り込み腐朽してしまう恐れがあります。
垂木が腐朽してしまうと、屋根材や板金をしっかりと固定することができなくなってしまうため、強風の際に棟板金が飛散したり、落下し二次被害を引き起こす危険性も十分にあります。
屋根の一番高い所に取り付けられた棟板金は、紫外線や雨風の影響を受けやすく、その他の部材に比べて劣化が早い箇所でもあるので、雨漏りなどの被害を防ぐためにも定期的な点検やメンテナンスは欠かせません。
雨樋の破損
雨樋には、屋根に降った雨を地上や下水に排出するという役割があります。
雨樋は、大きく分類すると「軒樋」「集水器」「竪樋」の3つで構成されていますが、この3つが正しく機能しないことが原因となり雨漏りが発生する場合があります。
雨樋に雹が当たってしまうと、雨樋のひび割れや外れ、雨樋の歪みや勾配不良などの不具合が生じて、オーバーフローを起こし想定していない箇所に雨水が流れ込んでしまうのです。
万が一、屋根から勢いよく落ちてきた雨水が地面に落ちて、通行人や周囲の建物に泥が跳ねて汚してしまえば、トラブルに発展してしまう恐れもあるので注意が必要です。
修理方法と費用相場
雹によって被害が生じた場合、その被害の大きさによって修理方法や金額は異なります。修理方法と費用相場は次の通りです。
屋根の葺き替え
葺き替えとは、既存の屋根材を全て撤去してから新しい屋根材を取り付ける方法です。雹によって雨漏りが発生している場合や、既に屋根のカバー工法を行ったことのある場合には、葺き替え工事を行うのが一般的です。
葺き替えでは、屋根材だけではなく下地も全て新しいものに交換するので、雨漏りを根本から解決することができ、再発の心配がないというメリットがあります。
葺き替え工事の費用は、建物の規模や使用する屋根材によっても異なりますが、一般的な戸建て住宅で100万円〜300万円程が相場となっています。
また、大掛かりな工事になるため、他の修理方法にくらべて工期も長くなりますので、日常生活にも影響が出ることとなります。工事を行う時期は業者とよく相談しながら決める必要があります。
瓦屋根の場合は、スレートやガルバリウム鋼板の屋根と比べて、費用が高額になる可能性があるので注意が必要です。
屋根のカバー工法
カバー工法とは、既存の屋根材の上から新しい屋根材を取り付けるリフォーム方法です。
既存の劣化した屋根をそのまま残して施工することになるので、屋根材のへこみなど傷みが軽度で下地まで劣化が進行していない状態でなければ施工はできません。
また、屋根が二重になることで、防音性が高まるというメリットはありますが、屋根の重量が増えるため、新しく設置する屋根材は金属系やアスファルトシングルなどの軽量な屋根材に限られます。
カバー工法にかかる費用も葺き替えと同様に、建物の規模や使用する屋根材によっても異なりますが、一般的な戸建て住宅で70万円〜200万円程が相場となっています。
棟板金の修理
棟板金の場合、塗膜の剥がれや軽度のサビ程度であれば、塗り替えによるメンテナンスで問題ありません。棟板金の塗装費用は棟板金の長さによって異なりますが、5万円〜10万円程が相場となります。
棟板金に破損や穴あきが発生していたり、サビが広範囲に広がり劣化が激しい場合は、棟板金そのものを新しいものに交換する必要があります。
棟板金の交換費用も棟板金の長さによって異なりますが、7万円〜25万円程が相場となっています。ただし、棟板金の中にある貫板と呼ばれる下地材の交換も必要な場合は、さらに費用が必要になります。
雨樋の修理
雨樋の被害が部分的なものであれば、部分交換で対応可能です。しかし、被害が広範囲に生じている場合は、雨樋全体を交換する必要があります。
雨樋交換にかかる費用は、一般的な戸建て住宅で部分補修や一部のみの交換だと数千円〜1万円、全体の交換の場合は10〜30万円程が相場となっています。
雹被害は火災保険を使って修理できる可能性がある
実際に火災保険を利用することができるかは、申請など所定の手続きをおこなったうえで決定されますが、雹による被害の場合、火災保険を使って屋根板金の修理ができる場合があります。
また、「雹災」による被害と認められる可能性があるケースとしては、以下のようなケースが挙げられます。
・屋根に雹が当たって屋根材が割れた
・雹が当たって瓦が落下した
・棟板金に雹が当たって変形した
・雨樋に雹が当たって穴が開いた
火災保険が適用されないケース
火災保険が適用されないケースとしては、主に次の3つのケースが挙げられます。
経年劣化による破損
火災保険では、自然災害や火災による損害が補償の対象となるため、経年劣化による破損では補償の対象外となってしまいます。
また、雹が原因の被害であっても、保険会社の調査によって経年劣化が原因と判断されてしまえば、残念ながら火災保険を利用することはできません。
軽度な損傷
加入している保険会社によっては、実際に雹による被害を受けたとしても、軽度なへこみや損傷で機能自体に問題がないと判断されてしまうと、火災保険の適用外とみなされてしまう場合もあります。
工事金額が免責金額に達していない
修理費用が免責金額以下の場合は補償されません。免責金額とは、火災保険を利用する際にお客様が自己負担しなければならない金額のことです。
免責金額は加入している保険会社やプランによって異なりますが、一般的には20万円程で設定されていることが多いです。
火災保険の申請方法
おおまかな火災保険の申請方法は、以下の通りです。
1.屋根の修理業者に見積もり依頼する
2.保険会社に連絡をして火災保険の申請をする
3.保険会社の鑑定人による現地調査
4.保険金の支払い
5.工事開始
業者に見積もりを依頼する際には、火災保険を使用する旨も伝えておくと、今後の書類の準備や手続きをスムーズに進めることができます。
また、保険金の支払い期限は、請求手続きをしてから30日以内と保険法によって定められていますが、大規模な災害時や特別な調査が必要な場合は、30日以上かかる可能性があります。
火災保険を利用するときの注意点
火災保険の申請は被害が起きてから3年以内
火災保険の申請は、被害を受けてから3年以内に行わなければなりません。3年以上前の被害が原因で雨漏りが発生したといったケースは補償の対象外となります。
また、3年以内の申請であっても、被害から時間が空きすぎると被害状況の確認が難しくなり、保険の申請も通りにくくなってしまうため、できるだけ早めに手続きすることが大切です。
もし直ぐに申請できない場合は、被害を受けた箇所の写真を残しておくのが良いでしょう。
必ずしも保険金が下りるとは限らない
屋根修理で火災保険が適用されるケースはありますが、必ず申請が通ると言う訳ではありません。
さらに、保険が適用されたとしても、受け取れる金額は保険会社の判断によって決定されるため、調査の結果、申請した金額の一部しか支払われないというケースも少なくありません。
金額が確定する前に工事を行ってしまえば、想定していた金額の保険金を受け取ることができずに、全額自己負担になってしまう恐れもありますので、工事は必ず受け取れる保険金額が確定してから行いましょう。
火災保険を悪用する業者
被害内容によっては、火災保険が適用される屋根修理ですが、火災保険を悪用した工事業者によるトラブルも多くなっているため注意が必要です。
必ず利用できる訳ではない火災保険を、何も確認せずに利用できると言う業者は信用できませんので、「火災保険を使えば無料で屋根修理ができる」というような悪徳業者には騙されないように気を付けましょう。
また、「保険金が下りなかったので契約を破棄したい」と伝えたときに、高額な解約金・違約金を請求しようとする業者も存在しますので、契約する際に解約金・違約金について確認しておくことが重要です。
火災保険の詳しい条件や申請方法についてはこちらのページをご確認ください。
⇒「屋根修理で火災保険を利用する方法」
まとめ
雹が降ることで、屋根材の破損やへこみ、棟板金や雨樋の破損などの被害を受ける可能性があります。
万が一、雹によって受けた被害をそのまま放置してしまうと、劣化が進行し雨漏りや建物全体に深刻なダメージを引き起こす可能性もあるので、早急な対処が必要です。
修理費用は被害の規模や使用する屋根材などによっても大きく異なりますが、屋根全体に被害がみられたり、雨漏りが発生している場合には、数百万円もの修理費用がかかるケースも少なくありません。
雹による被害では、火災保険を利用することができるケースもあり、火災保険が適用されれば高額になりがちな修理費用の負担を軽減できますので、被害を受けた場合には早めに保険会社へ申請しましょう。