「瓦は丈夫だから大丈夫」「瓦はメンテナンスフリー」とお考えの方もいるかもしれません。
しかし、どのような屋根材でも適切なメンテナンスを怠ると、雨漏りや屋根全体の深刻な傷みにつながります。
今回は瓦屋根のズレ・割れが起きる原因や修理方法などをご説明いたします。正しい知識を身につけることで屋根の寿命を延ばし、建物の耐久性も維持することにつながります。
目 次
瓦屋根はメンテナンスフリーではない

瓦屋根は耐久性が高く、メンテナンスが不要と思われがちですが、これは瓦そのものの話であり、屋根全体としては定期的なメンテナンスが欠かせません。
瓦を固定している漆喰・下地材・防水シートは年月の経過とともに劣化し、地震や台風をきっかけに瓦がズレたり、割れたりすることもあります。
「瓦が丈夫だから大丈夫」という思い込みで放置してしまうと、雨漏りや屋根内部の腐食、瓦の落下事故などの深刻なトラブルに発展します。瓦屋根特有のトラブルと修理方法をしっかり把握しておきましょう。
瓦屋根の種類
補修方法や費用は瓦の種類によって異なります。まずは使用中の瓦の種類を把握しておくことが大切です。
日本瓦(粘土瓦)

日本瓦は粘土を高温で焼いた伝統的な瓦です。耐久性が非常に高く、適切にメンテナンスすれば50~100年以上持つと言われています。基本的に塗装によるメンテナンスは不要です。
注意点として、重量があるため、建物の負荷や耐震補強の必要性を考慮することが重要となります。
日本瓦の中にもいくつかの種類があります。
・釉薬瓦(ゆうやくがわら)

瓦表面にガラス質の釉薬を施したタイプです。
ガラス質なので艶のある美しい見た目が特徴的で、釉薬の種類によって赤や青などの色を付けることも可能です。また、釉薬で瓦をコーティングすることにより、耐水性・耐久性がアップします。
・いぶし瓦

瓦を燻して炭素皮膜(煤)を形成するタイプです。独特の銀色が特徴で、お寺や神社などの和風建築によく採用されています。
年月の経過とともに色が落ち着いてくるため、味わい深い趣きある雰囲気を楽しめます。ただ、この変色による色ムラがデメリットと感じられる方もいるかもしれません。
セメント瓦

名前のとおりセメントを原料とした瓦で、1970~1980年代に普及しました。あらゆる形状やカラーがあり、豊富なバリエーションの中から選択することができます。
ただし日本瓦とは違い、セメント瓦は吸水性が高いため、定期的な塗装メンテナンスが必要です。塗膜による防水機能が低下すると、苔やカビが発生したり、瓦自体の劣化を早めてしまいます。
モニエル瓦(乾式コンクリート瓦)

セメントと砂を混合したコンクリート製の瓦で、こちらも1970~1980年代に普及しました。表面に施されたスラリー層と呼ばれる特殊な層により、防水性が高い特徴があります。
ただ、現在は生産が終了しており、交換などのメンテナンスの際に代替品を用意しなければならないといった問題があります。また、セメント瓦と同様に定期的な塗り替えを行い、雨水の吸水を抑える必要があります。
その際、スラリー層をしっかりと除去することが重要です。スラリー層の除去が不十分だと、早期に塗装が剥がれてしまいます。
瓦がズレる主な原因
瓦がズレる原因は、主に次のようなケースが挙げられます。
漆喰の劣化・剥がれ

漆喰には瓦を固定したり、隙間を埋めて雨水の浸入を防ぐ役割があります。漆喰は経年劣化によってひび割れや剥がれを引き起こし、劣化を放置していると瓦を固定する力が失われ、瓦がズレてしまいます。
さらに漆喰の崩れによって雨水が屋根内部に浸入すると、下地の劣化進行や瓦全体のズレ、雨漏りの発生などにつながる恐れもあります。
たとえメンテナンス不要の瓦を使用していたとしても、漆喰は15~20年を目安に定期的な修理が必要です。瓦自体は無事でも、支えている部分が劣化していれば屋根は機能しません。
地震による揺れ

地震の揺れで瓦がズレるケースは非常に多く、大きな地震でなくても繰り返しの小さな揺れの積み重ねでじわじわとズレが生じます。
特に屋根の頂上部の棟瓦は揺れの影響を受けやすいため、注意が必要です。地震発生後は必ず専門業者による点検を受けるようにしましょう。
強風・台風

強風で瓦が持ち上がり、元の位置からズレてしまうことがあります。漆喰の劣化などにより固定が緩んでいる場合は被害が大きくなりやすく、瓦が完全に吹き飛ぶケースもあります。
近年は台風の大型化・線状降水帯による局地的強風が増加しており、被害リスクが高まっています。地震発生時と同様に、台風通過後も専門業者による点検を実施するようにしましょう。
屋根を歩いたことによるズレ

アンテナ工事や太陽光パネルの設置、点検などで屋根に上った際に、瓦を誤って踏んでズレてしまうケースがあります。特に素人による屋根上作業は、ズレや割れを引き起こす主要原因の一つです。
瓦屋根の上を歩く際は、瓦の形状に合わせた歩き方が必要ですので、点検・修理の際は必ず専門業者に依頼しましょう。
経年による土台の劣化

古い工法の場合、瓦の下に「葺き土(ふきつち)」と呼ばれる土を敷いて固定しています。この土が長年の乾燥・収縮によって劣化すると、瓦が動きやすくなり、瓦の固定力低下とともにズレが生じてしまいます。
瓦が割れる主な原因
瓦は硬いから割れないと思われがちですが、直接的な衝撃・凍害・素材の経年劣化によって割れることがあります。特にセメント瓦・モニエル瓦は吸水性が高いため、劣化が進んだものは衝撃に対して非常に脆くなっています。
飛来物による衝撃

台風や強風で飛んできた枝や石、その他の飛来物が瓦に直撃して割れるケースがあります。特に劣化が進んでいるセメント瓦は軽い衝撃でも割れやすくなります。
また、粘土瓦のような耐久性の高い瓦の場合でも、直接的な衝撃には弱い特徴があります。
屋根の上を歩いたことによる破損

正しい知識・歩き方を知らないと、瓦の踏んではいけない部分を踏み抜いてしまう可能性があります。
瓦1枚ではなく数枚が連動して割れることもあり、被害が広がりやすいため、点検・修理の際は必ず専門業者に依頼するようにしましょう。
凍害

寒冷地では、瓦に吸収された水分が冬季に凍結・膨張を繰り返すことでひびが入る「凍害」が発生するケースがあります。
特にセメント瓦・モニエル瓦は塗膜が劣化すると吸水性が上がり、凍害のリスクが一気に高まるため注意が必要です。
経年劣化

セメント瓦・モニエル瓦は吸水性が高く、水分の吸収・乾燥・凍結を繰り返すことで素材が脆くなり、ひびや割れが生じやすくなります。
定期的な塗り替えを行って瓦を保護し、雨水の吸水を抑えることが重要です。
施工不良

瓦の設置時に施工不良があり、荷重が一部に集中して割れてしまうことがあります。
その他にも過去の修理の際に不足があった場合や、固定の釘・ビスを打ちすぎたり、反対に固定が足りない場合も瓦の割れにつながる可能性があります。
ズレ・割れを放置するとどうなるのか
瓦のズレ・割れを放置するのは危険です。部分的な症状だとしても、放っておくほど被害が深刻化・広範囲化していきます。
屋根内部の被害は目に見えないまま進行するため、気づいたときには手遅れになっているケースも少なくありません。
防水シートへの負担増大

瓦の下には防水シート(ルーフィング)が施されています。瓦がズレたり割れたりすると、その部分から雨水が直接防水シートに当たります。
防水シートは雨水の浸入を防ぐ二次防水の役割を持ちますが、常に雨水にさらされると劣化が急速に進み、最終的に下地の腐食や雨漏りの発生につながってしまいます。
雨漏りの発生

前述したように、瓦のズレや割れから雨水が浸入すると防水シートの劣化が進行し、雨水が屋根内部に浸入します。
雨漏りは天井や壁のシミ・水滴として初めて認識されることが多いですが、それらの症状が現れた段階では、すでに屋根内部ではかなりの被害が広がっています。
雨漏りは屋根の耐久性低下だけでなく、建物全体の耐震性が低下したり、木材・鉄部の腐食、シロアリ・カビの発生などさまざまな被害をもたらします。
野地板・垂木の腐食

雨水の浸入が続くと、野地板や垂木などの木材が腐食し、屋根全体の強度が低下します。強度が下がると最悪の場合、地震発生時などに天井が抜け落ちてしまう恐れもあります。
腐食が広範囲に及んだ場合は部分修理では対応できず、屋根全体のリフォームが必要になります。費用も高額になるため、早期発見・早期対処が大切です。
瓦の落下による事故

ズレた瓦・割れた瓦が強風や地震をきっかけに突然落下し、通行人や車、周囲の建物に被害を与える危険があります。
いつトラブルに発展するかわかりませんので、周囲に危害を加えてしまう前に対処するようにしましょう。事態が悪化すると人身事故・損害賠償問題に発展するリスクもあります。
瓦のズレ・割れのサインを見逃さない
以下のような症状が見られたら、早めに専門業者に点検を依頼しましょう。屋根は普段目が届きにくい場所です。だからこそズレ・割れのサインを見逃さないことが重要です。

瓦屋根の部分修理の方法
被害が局所的な段階であれば、部分修理で対応できます。修理方法は被害の種類・範囲・原因によって異なりますので、それぞれの工法の特徴と注意点を把握しておきましょう。
瓦のズレ直し

ズレた瓦を元の正しい位置に戻す作業です。瓦自体に破損がない場合はズレ直しのみで対応できます。再度ズレないよう、必要に応じて銅線や専用クリップで固定します。費用は軽微なものであれば数万円程度で済むケースが多いです。
ただし、ズレの原因が漆喰の劣化や葺き土の痩せにある場合は、瓦のズレを直すだけでは解決にはなりません。漆喰補修や下地の修繕工事を行い、瓦を元の位置に戻す作業を行います。
また、ズレが数枚ではなく広範囲に及んでいたり、防水シートの劣化が進行している場合は、棟瓦の積み直しや防水シートの新設が必要です。
割れた瓦の差し替え

割れ・欠けが起きている瓦のみを交換する方法です。現在も流通している瓦であればスムーズに対応可能ですが、廃番品の場合は形状の近い瓦を探す必要があります。
セメント瓦・モニエル瓦は廃番品が多く、完全に同じものが入手できない場合は色・形状の近い代替品を使用することになります。色合いが異なることがありますが、機能面では問題ありません。
漆喰の補修・打ち替え

漆喰に割れ・剥がれ発生している場合は、古い漆喰を撤去してから新しい漆喰を塗り直します。漆喰の劣化はズレや雨漏りの原因となるので、瓦の交換や割れ補修を行う際に併せて点検・補修をしておくと安心です。
棟瓦の積み直し

最上部の棟瓦のズレや歪みが大きかったり、漆喰や下地の劣化が影響している場合は、棟瓦取り直し工事(棟瓦積み直し工事)を行います。
棟瓦をいったん全て解体し、正しい状態に積み直す方法です。瓦自体に破損がなければ、一度外した瓦を再度利用して積み直します。
内部の葺き土・漆喰も新しくできるため、棟部分の耐久性を大きく回復させることが可能です。
葺き直し

葺き直しとは、既存の瓦を全てはがし、下地や防水シートを新しいものに交換してから、はがした瓦を元に戻す工事方法です。
瓦自体は、耐用年数が50年以上と高寿命なため、頻繁にメンテナンスをする必要はありませんが、下地の寿命は15~20年程度となります。
そのため、瓦に問題がなくても、内部のメンテナンスは定期的に行う必要があります。
部分修理と全体リフォームの判断基準
瓦屋根の修理は、被害が局所的であれば部分修理で対応できますが、以下のような場合は葺き直しや葺き替えなどの全体的なリフォームを検討する必要があります。

部分的な修理のほうが費用を抑えられますが、部分修理を繰り返すよりも、全体リフォームのほうが長期的にコストを抑えられるケースもあります。
そのため、漆喰や下地の状態、今後のメンテナンス計画、現在の家に住み続ける年数などを考慮しながら修理業者と相談することが大切です。
修理費用の目安
| 修理内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 瓦のズレ直し(数枚) | 1万〜5万円程度 |
| 瓦の差し替え(1枚) | 1万〜5万円程度 |
| 漆喰補修 | 5万〜15万円程度 |
| 棟瓦の積み直し | 15万〜40万円程度 |
| 葺き直し | 90万〜160万円程度 |
| 葺き替え | 100万〜300万円程度 |
まとめ
瓦屋根のズレ・割れは、漆喰の劣化・地震・強風・飛来物・踏み割れなど、さまざまな原因で発生します。そして、ズレ・割れを放置していると雨漏り・野地板の腐食・瓦の落下事故という深刻なトラブルを招いてしまいます。
瓦自体は耐久性が高い素材ですが、完全にメンテナンスフリーというわけではありません。定期的に点検を実施したり、漆喰や下地の補修などを行うことが不可欠です。
屋根の状態をご自身で把握するのは難しいため、まずは専門業者に状況を確認してもらい、適切な対処でトラブルを未然に防ぐようにしましょう。


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