スレートは、セメントを薄く板状に加工した屋根材で、住宅から工場まで幅広く使用されています。スレート屋根は、耐久性を維持するために劣化状況によって適切にメンテナンスを行う必要があります。
このページでは、スレート屋根の特徴やメンテナンス方法について紹介いたします。
スレート屋根とは
スレート屋根は、日本の戸建て住宅では最も普及している屋根材で、主にセメントで作られた化粧スレートと、天然石で作られた天然スレートの2種類があります。
化粧スレート
化粧スレートは、セメントに繊維素材を混ぜて薄い板状に加工した屋根材のことで、日本では化粧スレートが一般的なため、スレートという言葉は「化粧スレート」のことを指して使われます。
正式な名称は、「着色スレート瓦」ですが、メーカーや地域などによって「コロニアル」「カラーベスト」「平板(へいばん)スレート」「化粧(化粧スレート)」「スレート瓦」「新生瓦(しんせいかわら)」など様々な呼び名で呼ばれています。
天然スレート
天然スレートは、粘板岩を板状に薄く加工して作られた屋根材のことです。天然石でできているため、劣化も少なく自然の風合いを生かした高級屋根材です。ドイツなどヨーロッパの建物では古くから使用されてきました。
ただ、天然石であることに加え、運搬や加工ともに大変な技術力を要することから非常に高価な屋根材のため、日本ではほとんど見かけることはありません。
スレートの種類
化粧スレートの中にもいくつかの種類があり、基本的に原料は同じですが、加工の仕方によって主に4種類に分類されます。それぞれの特徴は以下の通りです。
平板スレート
平板スレートは、厚さ5mmくらいの薄い板のような形状をしたスレートで、「薄板スレート」や「薄型スレート」などとも呼ばれ、戸建て住宅では最も使用率の高い屋根材です。
また、この平板スレートでは、ケイミュー株式会社から販売されている「カラーベスト」というブランドの「コロニアル」という商品が有名なため、その名前から平板スレートのことを「カラーベスト」や「コロニアル」と呼ぶ場合もあります。
厚型スレート(セメント瓦)
厚型スレートは、セメントモルタルを型枠に入れ、プレス、脱水をし瓦のような形状に成型したスレートです。現在の正式名称は、「プレスセメント瓦」となっていますが、平板スレートに比べ、厚みがあることから厚形スレートと呼ばれています。
30年程前までは、厚形スレートによく似た屋根材で、モニエル瓦と呼ばれる洋式のコンクリート瓦が世界的に流行していましたが、2010年にメーカーが解散したため、生産が終了しています。
波形スレート
波形スレートは、波状の形状をしたスレートです。サイズが大判で、屋根材の下に野地板が必要ないという特徴があります。
また、金額が比較的安価で、耐久性が高いことから、工場や倉庫、学校の体育館などの大型物件で使用されています。
石綿スレート
石綿スレートは、セメントと石綿(アスベスト)を混ぜ合わせて作られたスレートのことです。石綿には粘り気のある成分が含まれており、スレートの耐久性を高める優れた素材として配合されていました。
しかし、石綿は人体の健康被害に繋がることから、2006年に法令で石綿の含有量が重量の0.1%を越えるものの製造、使用等が禁止されました。
そのため、そのため、現在では新たに使用されることはありません。ただ、2006年以前に建てられた建物では、石綿が含まれている可能性があるため注意が必要です。
スレート屋根のメリット
スレート屋根には他の屋根材に比べ以下のようなメリットがあります。
カラーバリエーションが豊富
スレート屋根は、表面に施されている塗装の色やデザインが豊富なため、自分好みのデザインを選ぶことができます。
また、日本瓦や天然スレートとは違い、屋根塗装などのメンテナンスが必要となりますが、塗り替えの際に屋根の色を変更することもできるというのも化粧スレートの特徴と言えます。
軽量なので耐震性に優れている
スレート屋根は、瓦の半分程度の重さです。非常に軽量なため、屋根にかかる負担を軽減できるというメリットがあります。
屋根が軽くなることによって、建物の重心が下がることで地震が発生しても揺れが少なく、耐震性に非常に優れているという特徴があります。
現在の主流なので施工できる業者が多い
化粧スレートは、戸建て住宅で最も使用率の高い屋根材です。
そのため、基本的にどの業者も取り扱いの経験があり、工事を請け負っている業者も多いので、複数の業者から相見積もりを取って施工内容や費用を比較検討することができます。
スレート屋根のデメリット
スレート屋根には、以下のようなデメリットも存在します。
衝撃に弱く、割れやすい
スレートは薄い板状に加工されているため、割れや破損が起こりやすいというデメリットがあります。台風などの強い外的要因や経年劣化によって割れてしまうことがあります。
コケや藻・カビが生えやすい
スレート自体は、水を吸いやすいセメントを主材料としているため防水性が低く、表面を保護している塗装が劣化するにつれてコケや藻が発生しやすくなります。特にコケが良く育つ条件となる「適度な日光・水分」が揃う北面では、増殖しやすいので注意が必要です。
また、コケや藻は水分を含みやすく、屋根が常に湿っている状態になってしまいます。その水分が固まったり溶けたりを繰り返すことによって、スレートの割れに繋がる可能性もあります。
メンテナンス頻度が多い
スレート自体は防水性の低い屋根材のため、表面に塗装をすることで防水性を保っています。紫外線や風雨により表面の塗膜が劣化することによって防水性が低下してしまうため、10年程度を目安に塗装による定期的なメンテナンスが必要になります。
新設時の化粧スレートの価格と耐用年数
化粧スレートの価格は、1㎡あたり4,500〜8,000円程度が相場で、耐用年数は20〜25年程度です。
化粧スレートは約10年ごとに塗り替えが必要です。耐用年数を過ぎている場合は、劣化状況に応じてカバー工法または葺き替えによるメンテナンスを行います。
スレート屋根の劣化症状
スレート屋根の代表的な劣化症状は以下の通りです。
色褪せ・変色
スレートの表面に施された塗装が紫外線や風雨によって劣化すると、色褪せや変色の症状が現れます。スレートが色褪せや変色している場合は、塗膜が劣化し防水機能が低下しているため、根自体が水分を吸収しやすい状態になってしまいます。
そのまま放置してしまうと、塗装が剥がれやスレート材自体の劣化に繋がりますので、塗り替えをしてスレート材を保護する必要があります。
コケや藻の発生
スレート自体は、水を吸いやすいセメントを主材料としているため防水性が低く、表面を保護している塗装が劣化するにつれてコケや藻が発生しやすくなります。特にコケが良く育つ条件となる「適度な日光・水分」が揃う北面では、増殖しやすいので注意が必要です。
また、コケや藻は水分を含みやすく、屋根が常に湿っている状態になってしまいます。その水分が固まったり溶けたりを繰り返すことによって、スレートの割れに繋がる可能性もあります。
そのため、状況の悪化を防ぐ為にも早めのメンテナンスが必要となります。
スレートの反り
スレートの劣化が進行し、スレート自体が水分を吸収するようになると、濡れて乾燥を繰り返すことで徐々にスレート材が反り返ってしまうことがあります。
反り返りによって生じた隙間から、雨水が浸入し雨漏りが起こる可能性もあるので、このような症状がみられる場合には、早めにメンテナンスを行う必要があります。
スレートのひび割れ・欠け
スレートに強風で何か硬いものが衝突したり、水分を吸収し膨張したスレートが乾燥する、または、凍結と融解を繰り返すなどにより、ひび割れたり欠けてしまうことがあります。
スレートの反りと同様に、ひび割れや欠けた部分から内部に雨水が浸入する恐れがあるため、早急なメンテナンスが必要です。
棟板金の劣化・釘の浮き
棟板金とは屋根の頂上部に取り付けられた板金のことで、屋根の頂上部分から雨水の浸入を防ぐ役割があります。
この棟板金が劣化すると、板金に施された塗装に色褪せや塗膜の剥がれなどの症状が現れます。また、塗膜が劣化することにより防水機能が低下し、サビが発生することもあります。
サビをそのまま放置してしまうと穴があいたり、錆が広がり雨漏りの原因にもなるため、定期的なメンテナンスが大切です。
そのうえ、棟板金を固定している釘は7〜10年程で浮いたり、緩んできてしまいます。板金の固定が弱まれば、雨漏りや悪天候時に飛んで行ってしまう危険性もあるため、適切な時期に修理をして棟板金が外れないように注意しましょう。
スレート屋根のメンテナンス方法と費用
スレート屋根は、定期的なメンテナンスが必要です。スレート屋根の修理やリフォーム方法は以下の5つの方法があり、ご予算や劣化状況によってメンテナンスの方法は異なります。
ひび割れ補修
ひび割れや欠けの症状が軽度な場合には、コーキングによる補修が可能です。補修の費用は、施工範囲にもよりますが、1万円〜5万円程度が相場となります。
部分的な差し替え
スレートの欠けやひび割れが大きい場合には、欠損部分のスレートを新しいものに交換します。スレート屋根は、板同士が重なるように下から順に固定されているため、欠損部分のスレートのみを取り外すことはできません。
そのため、部分的な差し替えを行う場合には、欠損部分を切り取って新しいスレートを上から接着して固定します。部分差し替えの費用は、1箇所あたり1万円〜5万円程度が相場となります。
塗装
スレートの塗装に劣化がみられる場合には、塗り替えをします。塗り替えをすることで、塗膜が表面をコーティングし、スレート自体に水分が染み込むのを防ぐことができます。
スレートが水分を吸収してしまうと、スレート屋根の強度が一気に低下してしまうため、出来るだけ長く保たせるためにも、定期的な塗り替えをオススメします。
カバー工法
カバー工法とは、既存のスレート屋根の上に、そのまま新しい屋根材を被せる工法です。カバー工法では、新しい屋根材には、軽量なガルバリウム鋼板を使用するのが一般的です。
カバー工法は屋根の重さが増加するため構造面での確認も必要となりますが、、葺き替えに比べ費用を抑えて屋根全体の改修を行うことができます。
カバー工法の費用は、80万円〜140万円が相場となります。
葺き替え
葺き替えとは、既存のスレート屋根を全て撤去してから、新しい屋根材に葺き替える方法です。防水シートや野地板なども劣化状況によって新しいものに取り替える必要があり、工期も長く、廃材も多く出てしまうため、カバー工法に比べると費用は高額になります。
ただ、屋根の下地材を新しく取り替える工事は、葺き替え工事のタイミングでしかおこなえませんので、屋根の劣化が深刻な場合には、葺き替えがおすすめです。
葺き替えの費用は、葺き替えにかかる費用は140万円〜200万円が相場です。既存の屋根材を撤去する費用がかかるので、費用も高額になります。