屋根修理では、高所での作業のため足場を設置して工事を行うのが一般的です。
しかし、工事費用のうち足場の費用は15%〜20%を占めているため、少しでも費用を抑えるために足場の費用を節約できないかと考えられる方も少なくありません。
そこでこのページでは、屋根修理は足場なしでも可能なのかということや足場が必要な理由などについて説明いたします。
屋根修理は足場なしでも可能?
基本的に、屋根の修理では足場なしで工事を行うケースはありません。
その理由としては、施工時の安全確保や施工品質の向上などのさまざまな理由がありますが、足場なしで屋根修理を行った場合、厚生労働省が定めている労働安全衛生規則に抵触する恐れがあります。
屋根工事の足場に関する法律がある?
厚生労働省が制定した労働安全衛生規則の第518条には、作業床の端、開口部等を除く高さ2m以上の高所作業では、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならないと記載されています。
また、労働安全衛生法の第563条(作業床)では、2mを超える高所で一側足場以外の足場を組む場合、以下のルールが設定されています。
・足場の幅は40cm以上にすること
・足場の床材間の隙間は3cm以下にすること
・床材と建地の隙間は12cm未満とすること
これらは、転落の危険性がある高所作業で、現場の作業員の安全を確保するために設けられたもので、一般的な2階建ての住宅であれば屋根の高さは6〜7mほどとなるため、足場なしでは法令に抵触する恐れがあります。
足場なしでも屋根塗装ができるケース
基本的に足場なしで屋根修理を行うことはありませんが、以下に該当する場合は足場なしで屋根修理が行われることもあります。
・高さが2m未満場合
・高所作業車で屋根修理工事を行う場合
・平坦で勾配のない屋根での修理工事
・足場の設置が困難な場合
平坦で勾配のない陸屋根や屋上での作業では、作業員が墜落するおそれがないので、足場を設置する必要はありません。
足場が必要な3つの理由
作業員の安全確保
一般的な2階建ての住宅であれば屋根から地面までは6〜7m、1階屋根でも4〜5mもの高さがあり、高所での作業は非常に危険が伴います。
建設業における労働災害でも、高所からの墜落・転落が最も多く、厚生労働省が公表している「令和5年労働災害発生状況の分析等」では、平成30年から令和5年までの6年間で死亡災害1616人、そのうち653人が墜落・転落でなくなっています。
死傷災害は6年間で89,226人、そのうち29,098人もの方が墜落・転落で死傷しているのです。そのため、現場の作業員の安全を確保するために足場をしっかりと設置する必要があるのです。
近隣への配慮
足場は、現場の作業員の安全確保以外にも、近隣への飛散を防ぐという目的もあります。
足場のない状態で、高圧洗浄や塗装工事を行ってしまうと、水しぶきや塗料が飛散し近隣の住宅や車などを汚してしまう恐れがあります。
また、葺き替え工事で屋根を解体する際にもホコリが飛散してしまうので、近隣の方に迷惑をかけてしまいトラブルに発展してしまう可能性もあります。
そのため、設置した足場をぐるりと囲むように飛散防止ネットを設置することで、水しぶきや塗料、ホコリなどの飛散を防ぎ、近隣の方とのトラブルを避けるという役割も果たしています。
作業の能率や施工品質の向上
足場なしで作業した場合足元が不安定な状態になるため、経験豊富な職人でも作業に集中できずに、塗りムラができてしまったり、施工不良など普段なら起こり得ないミスが起こる可能性があります。
また、足場がなければ、道具や材料を運ぶために何度も屋根と地上を行き来しなければないけないので、作業効率が非常に悪くなって、通常よりも工期が伸びてしまう可能性もあります。
そのため、効率良く高品質な施工を行うためには、足場の設置は欠かせません。
足場の種類
屋根工事では、主に以下の4種類の足場が使用されます。それぞれの特徴は以下の通りです。
単管足場
単管足場とは、直径48.6mmの単管と呼ばれる鉄パイプとつなぎ止め金具である「クランプ」という部材を組み合せて建てる足場のことです。
足場の形状を柔軟にアレンジすることができるので、狭い場所でも足場を組むことが可能です。ただ、単管だけではしっかりとした作業スペースを確保することが難しく、他の足場と比べると安全性に欠けてしまいます。
そのため、高所のビルなどの工事には向いていません。
単管ブラケット足場
単管ブラケット足場とは、単管パイプを「ブラケット」という部材で固定し、足場板を取り付けた足場のことです。
単管足場の場合は、2本のパイプの上に乗って作業することになりますが、単管ブラケット足場の場合、足元に足場板を取り付けているため、バランスがとれて作業しやすくいという特徴があります。
ただ、ブラケットのボルトを閉めながら組み立てていくのでクサビ足場にくらべて、組み立てには時間がかかります。
クサビ(ビケ)足場
クサビ足場とは、コマと呼ばれる緊結部が一定間隔にもうけられた支柱に、両端に「くさび」が付いたパイプや手摺をハンマーで叩き込んで組み立てていく足場のことです。
くさびは、V字の形状をしているため、ハンマーで叩き込むことで「コマ」との間に隙間が無くなってしっかりと固定される構造になっています。
組み立てや解体が簡単で安全に作業ができるため 現在リフォームや屋根工事では最も採用されることが多い足場です。
ただ、ハンマーでくさびを打ち込むため、大きな金属音が発生してしまうので、クサビ足場を設置する際には、作業時間と周囲への騒音影響を考慮する必要があります。
屋根足場
屋根足場とは、屋根の勾配が5寸以上ある急勾配な屋根に設置される足場のことです。
通常屋根工事を行う際には、直接屋根に上がった作業をしますが、急勾配な屋根では、上に立って作業をすることが難しいため、安全に作業するために屋根足場を設置します。
また、屋根足場は、強風が吹きやすい場所や海に近い場所でも設置される場合があります。
無足場工法とは
無足場工法とは、足場を設置せずに施工を行う方法で、以前は中高層ビルなどの窓掃除を行なう際に採用されていましたが、現在では住宅密集地やマンションのリフォームの際にも採用されるようになりました。
ただし、建物の形状によって作業に制限があり、「14階以上の高層ビル」や「建物の屋上がロープの設置に向いていない」、「建物の一部に突出している箇所がある」などの理由から無足場工法では対応できない場合もあります。
また、無足場工法には以下の3種類がありますが、戸建て住宅や屋根修理で利用することはほぼありません。
ゴンドラ
ゴンドラとは、建物の屋上から可動式のゴンドラ機材をワイヤーロープで吊り下げる工法で、電力で上下左右とスムーズに移動可能で、昇降の操作は屋上の機器で行います。
ひとつのゴンドラに複数人が乗って同時に作業することができるので、効率良く作業を行うことができますが、他の工法より必要な設備が多くなるため、コストは高くなる傾向があります。
高所作業車
高所作業車とは、車の荷台に2m以上の高さの上昇することができる作業員の足場となる作業床を備えた車のことです。
また、高所作業車にはクレーンのような作業床のついたブームを備えたブーム式構造と、作業床が垂直に昇降する垂直昇降式構造の2種類があり、地上から昇降するため主に低い建物の作業で使用されます。
ただし、大型車両を駐車させることになるので、車が侵入できる広い空間だけではなく、道路交通許可証や警備員、高所作業車を扱うオペレーターも必要になります。
ロープアクセス
ロープアクセスとは、建物の屋上などから産業用のロープやアンカーなどの装備と機材を駆使して、作業員がロープに吊り下がって作業を行います。
ロープアクセスは、欧州でクライミングや洞窟探検などで古くから用いられてきたロープ技術が産業用に発展した技術で、2本のロープと2つのアンカーポイントを使用して、上下左右に移動することが可能です。
以前は安全性に懸念があったことからあまり利用されていませんでしたが、平成28年の労働安全衛生法改正により安全性が飛躍的に向上したことで、広く利用されるようになりました。
ロープアクセスは、足場を組む手間がかからず、大きな機材や設備も必要ないため大幅にコストが削減できるというメリットはありますが、両足を地に付けて作業をすることができないため、力が必要な作業をするには不向きなです。
屋根塗装の足場は無料にはなりません
足場無料などと謳っている業者も存在しますが、キャンペーンなどを理由に足場代を無料にすると言われた場合は要注意です。
工事費用の15%〜20%を占める足場費用を無料と謳う業者の場合、足場を無料にすることでお得感を出し、契約を急かす典型的な手法の場合がほとんどです。
このような場合、その他の項目に費用が上乗せされていたり、業者側に多額の利益が出るようになっていることが多いので注意が必要です。
できるだけ費用を節約したいという方は多いかと思いますが、安さだけを売りにして契約をしようとする業者は信頼性に欠けるため、すぐには契約せず必ず他社と比較するようにしましょう。
まとめ
屋根修理では高所で作業を行うため、作業員の安全や施工品質を確保するためには足場は欠かせません。
無足場工法が可能な場合を除いては、近隣の方に迷惑をかけてしまいトラブルに発展してしまう可能性もあるので、必ず足場を組んで作業をしてもらうようにしましょう。
また、悪質な業者の場合、足場無料などと謳い契約を迫るようなケースもありますので、今だけのキャンペーンなどと言われても、その場で契約はせずに、、他社との見積もりを比較するようにしましょう。