戸建て住宅に関する名称には、建築や不動産業界特有の専門用語や漢字が多く使用されるため、初めて聞いた方には分かりにくいと感じられる方も多いのではないでしょうか?
屋根修理にかかわらず住宅リフォームでは、見積り内容をしっかりと比較する必要があるため、各部位の名称や役割を正しく理解しておくことが大切です。
このページでは、戸建て住宅の各部位ごとに名称やその役割について説明いたします。
屋根周りの部位の名称
屋根周辺は、主に7つの部位があり、それぞれ各部位には以下のような役割があります。
破風・破風板(はふ・はふいた)
破風とは、屋根先端部の「への字」状になっている部分のことで、そこに取り付けられた板を破風板と呼びます。
破風板の素材には、木材系、金属系、モルタル系、窯業系、樹脂系など様々なものがありますが、現在は金属系や窯業系が主流となっています。
破風板を取り付けることで、風や雨が屋根裏に入り込むのを防ぐことができ、火災が発生した際には、延焼しやすい屋根裏へ炎が燃え広がるのを遅らせる役割もあります。
鼻隠し(はなかくし)
鼻隠しは、雨樋のある正面側の軒先に取り付けられる横板のことです。鼻隠しに使われる素材は破風板と同様に、金属系や窯業系のものが現在主流となっています。
また、破風板とほぼ同様の役割を担っている鼻隠しですが、大きな違いとしては、雨樋を設置するための下地になっているという点が挙げられます。破風板も先端部分に取り付けられていますが、構造上雨樋の取り付けはできません。
ケラバ
ケラバは、切妻屋根や片流れ屋根などの破風を含めた屋根の外壁より突き出した部分のことです。部材名ではなく部位を示す名称で、通常は屋根材や破風板、水切金具などで覆われています。
外壁は太陽の紫外線や熱が長時間あたることで劣化が早まってしまいますが、ケラバがあることで、外壁に直射日光があたるのを防ぐことができます。特に夏場など日差しが強い日には、室内に差し込む日差しを遮ることができます。
また、ケラバがあることで屋根からの水切りにもなるので、雨水が吹き込むのを防ぐ役割もあります。ただ近年では、デザイン性を重視してあえてケラバを出さない住宅もあります。
軒天・軒天井・軒裏(のきてん・のきてんじょう・のきうら)
軒天は、住宅を下から見上げた際に外壁から外側に突き出している屋根の天井部分のことです。外壁から外側に突き出した部分を軒と呼ぶため、軒天井や軒裏とも呼ばれています。
軒天には、一般的に軒天ボードと呼ばれる板を取り付けますが、屋裏を換気するために小さな穴が沢山開いている有孔ボードや軒天換気口などを使う場合もあります。軒天には、野地板や垂木など屋根の構造部分が丸見えにならないよう隠し見た目をスッキリとさせる役割があります。
また、美観性だけではなく、雨風や紫外線などによる外壁の劣化をおさえ、火災が発生したときには延焼を防止するという目的もあります。
大棟・主棟(おおむね・しゅむね)
屋根の面と面の接合部分のことを「棟」と呼びますが、寄棟屋根などのように棟が複数ある場合、頂上にある水平の棟のことを「大棟」や主棟と呼びます。
大棟部分は屋根全体の重量を支える重要な部位で、屋根材を固定したり雨水の侵入を防ぐ役割があります。ただ、屋根の最も高い位置にあるため、雨風の影響を受けやすく雨水も浸入しやすいので、定期的なメンテナンスが欠かせません。
隅棟・下り棟(すみむね・くだりむね)
隅棟は、寄棟屋根などのように複数ある軒のうち、軒先や屋根の隅に向かって四方の角部分にある棟のことです。屋根の上の部分から棟が下っているため、下り棟とも呼ばれています。
隅棟や下り棟は大棟と同様に、屋根材を固定したり雨水の侵入を防ぐ役割があります。こちらも雨風の影響を受けやすい位置にあるため、定期的にメンテナンスを行う必要があります。
ドーマー
ドーマー(domer)は、屋根から突き出した窓のことで、ヨーロッパ建築によくみられる形のため、ヨーロッパ調のデザイン用パーツとして屋根に設置する方も増えています。
屋根にドーマーを取り付けることによって、建物の高い位置からより多くの光を室内に取り込むことができ、窓があることで通気性を高める効果があります。
ただ、ドーマーは屋根垂木を切断して設置するため、屋根の形状が複雑になり雨水が溜まりやすくなります。そのため、ドーマー周辺の防水処理をしっかりと行い、雨水の浸入を防ぐ必要があります。
雨樋周りの部位の名称
雨樋周辺には、主に4つの部位があり、それぞれ各部位には以下のような役割があります。
雨樋(あまどい)
雨樋は、屋根の上に流れる雨水を数ヶ所に集め、地面の排水口に流すために設置される筒状の建材のことで、雨樋の素材には、塩化ビニル製のものが多く使用されます。
雨樋は、軒樋と縦樋の2つから構成されており、屋根の縁に沿って設置された軒樋で雨を集め、垂直に立っている縦樋が地面まで雨水を排水します。屋根面に降った雨水を軒先で受け止め外壁に流がれるのを防ぐことで、外壁や基礎を保護する役割があります。
雨樋を設置しなかった場合には、屋根から勢いよく落ちてきた雨水が地面に落ちることで、土や泥が勢いよく跳ね返って外壁を汚したり、建物の近くを歩いている人たちに雨水がひどく飛び散ってしまう可能性があります。
雨樋は、ゴミや落ち葉などが詰まりやすいので、定期的に掃除を行うようにしましょう。特に、住宅周辺に森や畑、公園などがある場合は雨樋にゴミや落ち葉が飛来しやすいので注意が必要です。
軒樋・横樋(のきどい・よこどい)
軒樋・横樋とは、屋根の軒先部分に沿って設置する筒状の建材で、屋根面の雨水を受ける役割があります。軒樋には緩やかな勾配が付けられており、この傾斜によって縦樋につながる「集水器」に雨水を流す構造になっています。
縦樋・竪樋(たてどい)
縦樋・竪樋とは、建物の外壁に沿って垂直に設置する筒状の建材で、軒樋から流れてきた雨水を地上に排水する役割があります。
縦樋と軒樋は集水器でつながっているため、接続部分が外れかけていると水漏れの原因となります。接続部分は接着不良や経年劣化などが原因で外れることもあるため、水漏れが発生している場合には専門業者による適切な処置が必要となります。
また、紫外線による劣化や外部からの衝撃で破損したり、筒の中にゴミや鳥の死骸が詰まってしまう場合もあるため、定期的な点検が必要です。
這樋(はいどい)
這樋とは、屋根の上を這うように設置する筒状の建材で、2階の縦樋から流れてきた雨水を1階の軒樋に導く役割があります。
這樋は、1階にかかっている屋根の軒先まで樋を這わせる必要があるため樋に長さがあり、部分的に固定しないと風の影響を受けて、ズレたり飛ばされてしまう危険性があります。
強風で這樋が飛ばされ、地面に落ちた雨水によって外壁が汚れてしまうというケースもあるので、トラブルを未然に防ぐためにも定期的な点検を行う必要があります。
集水器(しゅうすいき)
集水器とは、軒樋と縦樋の接続部分に取り付けられる建材で、大雨が降ってもオーバーフローしないようにある程度大きめなカップ状の形をしています。
集水器には様々な形状があり、角い容器に、排水口がついた「飾り集水器」と呼ばれるものや「E型」「F型」「N型」などがあります。
外壁周りの部位の名称
外壁周辺には、主に8つの部位があり、それぞれ各部位には以下のような役割があります。
入隅(いりずみ)
入隅とは、壁や柱などの2つの面が出会う場所で、内側の隅(角が凹になっている)の部分の名称です。入隅は、経年や地震などによってひび割れや隙間が広がりやすい部分のため、定期的に点検やメンテナンスを行う必要があります。
入隅や出隅は、職人が「計測基準点から入隅まで何ミリ」などと、建築物の長さを測定する時にも使われます。
出隅(でずみ)
出隅とは、入隅と反対に壁や柱などの2つの面が外向きに出会う(角が凸になっている)部分の名称です。出隅は、入隅と同様に建物の揺れや振動などによって少しずつ隙間が開いていきます。
開いた隙間から雨水が入ってしまうことで、雨漏りに繋がってしまう恐れもありますので、大きな被害が出てしまう前に定期的な点検やメンテナンスを行うようにしましょう。
幕板(まくいた)
幕板とは、1階部分と2階部分の境目やベランダなどに設置される横長の板のことで、帯や帯板(おびいた)、胴差(どうざし)などと呼ばれることもあります。
幕板は、美観的な目的で使用されることがほとんどで、外壁のアクセントやデザイン的な目的として設置されます。また、住宅のデザインによっては幕板を縦に取り付ける場合もあります。
庇・霧除け(ひさし・きりよけ)
庇とは、窓や玄関などの出入り口の上部に設置される小さな屋根のことで、霧除けとも呼ばれています。
庇には、窓や扉から直射日光や雨風が入り込むのを防ぐ役割があり、小雨程度であれば雨の日に窓を開けても室内に雨が入り込むことはありません。また、庇によって外壁に当たる雨や埃などが少なくなることで、外壁が汚れにくくもなります。
太陽から差し込む日差しは、季節により角度が変化します。夏は真上近くから差し込み、冬は斜めから差し込みますので、庇を設置することによって、夏の真上からの日差しを遮り、冬には日差しを室内に取り込むことで、室内の快適性を高める効果もあります。
雨戸(あまど)
雨戸とは、窓の外側に設置する板戸のことです。雨戸には、外からの飛来物や風から窓を保護するという役割があり、雨戸に鍵が付いているものであれば、雨戸と窓ガラスに二重に鍵があることで、防犯効果も高めることができます。
近年主流の金属シャッターを雨戸の代わりに設置している場合は、。防火性能のあるシャッターを下ろすことで延焼を食い止める効果が期待できます。
戸袋(とぶくろ)
戸袋とは、雨戸を開けたときに、戸を収納しておくための箱状のスペースのことです。戸袋に雨戸を収納することによって、雨や紫外線から雨戸を保護して、雨戸の劣化を抑える役割があります。
戸袋は、従来の和風建築では一般的に見られましたが、最近では雨戸の代わりにシャッターを設置する場合が多く雨戸、戸袋は、あまり見られなくなりました。
矢切り(やぎり)
矢切りとは、屋根が「への字」状になっている部分の外壁と屋根の間にある三角形のスペースのことで、雨水などがあたりにくい部分のため、換気口を付ける場合が多いです。
矢切りには、美観的な目的以外にも屋根の真下で屋根を支え屋根に力を伝える役割があります。また、通気口をつけている場合には、屋根内部に溜まった熱気や湿気を逃がす役割もあります。
2003年には建築基準法が改定により、屋内の化学物質の濃度を抑えるため、新築の建築物には24時間換気システムを付けるように義務付けられました。そのため、2003年以降に建設された物件では、換気を目的とした通気口が矢切り部分に設置されています。
水切り(みずきり)
水切りとは、基礎と外壁の間をぐるりと囲んでいる仕切り部分のことです。水切りには、雨水が建物に入り込むのを防ぐ役割があります。
水切りを設置していない場合は、雨水が直接基礎にあたり吸収されやすくなります。基礎に雨水が吸収されることによって湿気がたまり内部の躯体の劣化や雨漏りに繋がります。
基礎は家の土台になる部分なので、建物全体の耐久性を維持するためにも水切は重要な部分となります。
ベランダ・バルコニー・陸屋根の部位の名称
ベランダやバルコニー・陸屋根などの用語は一般の方でも聞き覚えがあると思いますが、意味が混合しやすい用語もありますので注意しましょう。それぞれ各部位には以下のような役割があります。
ベランダ
ベランダとは、住宅の外に張り出した屋根のあるスペースのことを指します。ベランダに関しては階数の定義がなく、屋根さえあれば1階でもベランダと呼びます。
そのため、マンションやアパートといった集合住宅や洋風の戸建住宅などに設置されているイメージのあるベランダですが、昔ながらの日本家屋にある「縁側」や「下屋」(げや)と呼ばれる部分も、ベランダに分類されます。
バルコニー
バルコニーとは、住宅の外に張り出したスペースのことで、スペース上部に屋根がなく原則2階以上に設置されています。バルコニーはベランダと混同されやすいですが、大きな違いとしては屋根の有無が挙げられます。
また、屋根がない形状のスペースとしては、バルコニーとは別にテラスと呼ぶものがあります。基本的に2階以上に設置するのがバルコニー、1階に設置するのがテラスと分けられます。
バルコニーの中でも、下の階の屋根にあたる部分を利用して造られた広いバルコニーのことを「ルーフバルコニー」と呼びます。さらに、このルーフバルコニーに屋根がついたタイプのことを「インナーバルコニー」と呼びます。
インナーバルコニーは、住宅の外に張り出した通常のバルコニーとは違い、部屋の一部が室外スペースとなったような形状をしているのが特徴です。
笠木(かさぎ)
笠木とは、塀や手すり、ベランダやバルコニーの腰壁など一番上に取り付けられている仕上げ材のことです。外壁や躯体を笠木で覆うことによって雨や風、空気中の埃などから守る役割があります。
また笠木には、見た目やデザイン性を高める役割もあり、ベランダだけではなく塀や門柱の笠木にこだわることで、おしゃれな雰囲気を演出することもできます。
ただ、経年などによって笠木が劣化することで雨漏りのリスクが高まります。そのため、定期的にメンテナンスを行い劣化症状がみられる場合には、シーリング材で補修したり、腐食しにくい金属製の笠木に交換するなどの対策が必要となります。
パラペット
パラペットとは、建物の屋根や屋上、ベランダ、バルコニーなどの外周部の先端に設けられた低い立ち上がり部分のことで、「胸壁(きょうへき)」や「扶壁(ふへき)」、「手すり壁」とも呼ばれます。
パラペットは、屋上に降り注ぐ雨をせき止め雨樋に流す構造になっており、雨水が直接外壁に流れるのを防ぐ役割があります。パラペットを設置せずに、酸性の雨水が外壁にそのまま流れてしまえば、外壁の劣化が早まってしまいます。
パラペットには、防水の役割のほかに落下リスクを軽減する役割もあります。
まとめ
戸建て住宅では非常に多くの部位があり、ここではその中でも重要な部分をご紹介しました。
もちろん全ての名称を覚える必要はありませんが、ある程度知識を身につけておくことで、業者に状況を伝えやすくなったり、見積もり内容をより深く理解することができます。
それぞれ部位ごとに耐候性や防水、防火などの役割があり、一つでも欠けてしまうと建物の劣化を早める原因になってしまいます。そのため、各部位で劣化がみられる場合には、建物の耐久性を維持するためにも定期的な点検・メンテナンスを行うことが大切です。