屋根は住人自身が直接劣化状況を確認することが難しいので、屋根修理などのリフォーム工事は悪徳業者による「詐欺被害」が後を絶ちません。
その被害は年々増加傾向にあり、国民生活センターでも「屋根工事の点検商法」に関する相談が増加していると報告されています。
このページでは、悪質な飛び込み営業による手口や屋根修理の詐欺被害に遭ってしまった場合の相談先などについて説明いたします。
目 次
屋根工事の点検商法のトラブルは年々増加しています!
点検商法とは、「近所で工事をしている」などと突然訪問し、それらしい根拠を示して不安を煽って工事の契約を迫る手口のことを指します。
飛び込み営業は営業手法の一つであり、飛び込み営業をしている全ての塗装業者が信用できないというわけではもちろんありません。
ただし、悪徳業者による点検商法の被害は年々増加傾向にあり、国民生活センターなどには、点検商法による相談が数多く寄せられているのも事実です。
2023年10月には、国民生活センターが「屋根工事の点検商法のトラブルが増えています」と報道発表を行い、全国の相談件数は5年で約3倍まで増加していると注意喚起しています。
屋根工事の点検商法に関する年度別相談件数
国民生活センターに寄せられた点検商法の相談件数の推移は以下の通りです。なお、2023年8月31日までの登録分で、消費生活センター等からの経由相談は含まれていません。
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|
年度別相談件数 | 923件 | 1,157件 | 1,824件 | 2,352件 | 2,885件 | 1,346件 |
屋根工事の相談割合 | 16.2% | 20.1% | 26.0% | 31.6% | 35.4% | 35.9% |
※情報出典:独立行政法人国民生活センター|屋根工事の点検商法のトラブルが増えています-典型的な勧誘トークを知っておくことで防げます!
国民生活センターに寄せられた被害事例
実際に国民生活センターに寄せられた事例を紹介します。
【事例1】「屋根瓦がずれているのが見えた」と来訪した業者との契約をクーリング・オフしたい
昨日、自宅に突然、「近くで工事をしているが、屋根瓦がずれているのが見えた。写真を撮って点検します」と言って業者が来訪した。気になっていたので頼むと、2人で屋根に上り、撮影した瓦の写真を見せられた。
「このままでは雨漏りするので工事は早いほうがよい。今なら資材の持ち合わせもあり、割引する」と勧誘され、約100万円で瓦を固定する工事の契約をした。契約後、業者が帰ってから調べると、応急処置の工法のようで信用できない。
まだ工事前だが、この契約はクーリング・オフできるだろうか。
(2023年8月受付 契約当事者:50歳代、女性)
【事例2】実家の父がずれた瓦の写真を見せられ修理工事の契約をしたがキャンセルできるか
父が長く住んでいる家に「近所で屋根の修理工事を行っている」「屋根瓦がずれている。雨漏りはないか」と業者が来訪した。その際は断ったが、数日後、「屋根の状況を見てあげる」と再訪を受け、調査を依頼した。
スマートフォンで撮った写真で瓦のずれと野地板の腐食を指摘され、工事費用約250万円の契約をした。しかし、よく見ると本当に自宅の屋根の写真なのか疑問だ。
複数社に工事の見積もりを取ったところ、契約金額は他社と比べて高いこともわかった。父はキャンセルしたいと言っているが、可能だろうか。
(2022年12月受付 相談者:30歳代、女性 契約当事者:70歳代、男性)
【事例3】屋根や外壁、床下等の修繕を次々と勧誘され契約した
1年半程前、屋根の無料点検をしているという業者が訪れ、点検後に屋根工事を依頼した。
その後、「外壁にもひびが入っている」と言われたのを皮切りに、屋根裏のウレタン吹き付けや床の補強、床下除湿のための換気扇設置等次々と勧誘され、合計500万円以上も支払ってしまった。
修繕から半年後に外壁に新たなひびが出てきたので、業者に保証修理を依頼したが、何度電話しても「都合がつかない」と言われ、ついに連絡が途絶えた。どうすればよいか。
(2022年6月受付 契約当事者:50歳代、女性)
【事例4】「近所で工事している」と言うので点検を依頼したが、近所の工事はうそだった
昨日、隣家の新築工事をしている業者だという男性2人が訪ねてきた。「工事の音はうるさくないか」などと聞かれた後、「お宅の屋根が剥がれていて外れそうだ。ついでに直してあげる」と言われ、見てもらうことにした。
屋根の写真を何枚か見せられ、「雨漏りの心配もある」「すぐに修理したほうが良い」と言われたが断った。2人が帰った後に、隣家で工事をしている業者に尋ねたら、「われわれとは関係ない」と言われ、うそだとわかった。
今後どのように対応したらいいか。
(2023年8月受付 契約当事者:60歳代、男性)
【事例5】ドローンで撮影したという写真を見せられ契約したが解約したい
自宅の庭で作業をしていたら突然業者から声をかけられ、「近所にドローンを飛ばして点検をしたところ屋根にひびが見つかった」と言われた。ドローンで撮影したという写真を見せられ、屋根工事を契約した。
「契約したらキャンセルすることはできません」と言われ了承したが、後になってよく考えると早まって契約してしまったのではないかと思い後悔している。解約したい。
(2022年8月受付 契約当事者:70歳代、女性)
被害事例からみる勧誘の手口
突然訪問し屋根の劣化を指摘する
特に多いのが、「定期無料点検にきました」「近所でリフォーム工事を行うので挨拶に来ました」などと偽り訪問するケースです。
本来訪問販売業者は、勧誘の前に「事業者名」や「勧誘目的で来た」ということを明示しなければいけないと特定商取引法で定められています。
悪徳業者は「たまたま屋根が壊れているのが見えた」「お隣の屋根も点検しました」などと言って、強引に営業しようとしてきますが、そもそもセールス目的を隠して営業を行うのは違法行為に当たります。
悪質な業者には、屋根の上で何をしているのか見えないことをいいことに、契約のためにわざと屋根を壊す業者も存在しますので、突然訪問してくる業者は、屋根に上げないようにしましょう。
もちろん、訪問販売を行っている業者の中でも優良な業者はいます。ただ、優良業者であれば契約を急かしたり、お客様を騙すようなやり方はしませんので、しっかりと業者を見極めることが大切です。
消費者の不安をあおる
実際の事例にもあるように「すぐに修理しないと雨漏りする」などと言って不安を煽って、契約をしようとする業者もいるので注意が必要です。
特に、台風などの自然災害の後には、「釘が浮いているのが見えた」「屋根がズレている」などと突然訪問し、不安を煽って強引に契約させようとする業者が急増する傾向にあります。
屋根の状況を確認するのは難しいので、突然自宅に訪問してきた業者に「このままでは大変なことになる」などと不安を煽られると言われるがまま契約してしまいそうになりますが、その場で契約をするのは絶対にやめましょう。
そのような業者は、親身な顔をして不安を煽ることで消費者の判断を鈍らせ、工事の必要性や見積もりの内容を他に相談させないようにその場で契約を迫ります。
もちろん、実際に屋根の状況が悪く、直ちに修理したほうがいい場合もあるかもしれません。ただし、優良な業者であれば、家族や友人に相談したり、相見積もりする時間を与えてくれるはずです。
消費者の負担が軽くなると思わせる
値引き自体が悪いわけではありませんが、見積内容を変えずに大幅な値引きを提示するのは悪徳業者の典型的な手法です。
「今だけのキャンペーン」や「この場で契約をしてくれるなら安くします」などと大幅な値引きをするケースがよくありますが、これは大幅な値引きによってお得感を演出し、その場で即決させるのを目的としています。
このような場合、値引き後の金額が適正価格になっていればまだいい方で、本来100万円でできる屋根修理を、「200万円から50万円値引きします」と大幅な値引きをしたように装い、相場より高く請求されるという場合も多くあります。
数十万円の値引きを提示された場合には、最初に高い金額を提示してから値引きをして、お客様にお得になったと思わせようとしている悪徳業者の可能性が高いので注意しましょう。
また、反対に相場より安すぎる見積もりにも注意が必要です。そのような業者は、人件費や材料費を浮かせるために工程を減らして手抜き工事をしたり、粗悪な材料を使って利益を得ようとする可能性が高いです。
次々に違う工事やサービスを勧誘する
被害事例3のように、屋根工事依頼した後に屋根裏のウレタン吹き付けや床の補強、換気扇設置、防カビ・防虫工事など次々に契約を持ちかけられることも少なくありません。
このような悪徳商法は次々販売とも呼ばれ、一度契約してしまうと「お得意様」として、別の業者にその情報が流れ、次々と他の業者が勧誘に来るというケースもありますので注意が必要です。
その場で業者の話を鵜呑みにせず、その工事が本当に必要な工事なのか家族や友人に相談したり、複数の業者から見積もりを取って慎重に判断することが大切です。
屋根修理の飛び込み営業が来たときの対処法
その場で契約しない
悪質な飛び込み営業の被害に遭わないためには、「その場で即決しない」というのが重要なポイントです。
悪徳業者は、親切な雰囲気や巧みな営業トークで相手の心に付けこみ、早急に契約に持ち込もうとします。契約を急かす理由としては、相見積もりをされたり家族に相談されると不都合な点が出てくるからです。
優良業者であれば、適正に見積もりを作成しているので、家族に相談する時間や見積もりする期間を設けてくれます。
反対に「今日契約してくれるなら割引できます」などと契約を急かしてくる場合は、悪徳業者の可能性が高いため絶対にその場で契約はせず、必ず時間をおいて判断するようにしましょう。
家族や友人に相談する
突然訪問されて、「雨漏りする」「家が倒壊する」などと脅されれば誰しも不安になるものですが、必ずその日には契約をせず、家族や信頼できる友人に相談をしましょう。
悪徳業者は、あらゆる手段を使って契約させようとするので、その熱意や脅しに押されて「断れずにそのまま契約してしまった」というケースも少なくありません。
ですが、家族と相談することを嫌がるような業者であれば、詐欺行為がバレてしまうのを恐れている証拠とも言えます。そのような業者は悪徳業者の可能性も高いので、その場で即決するのは非常に危険です。
必ず、業者と話した内容や資料などを共有し、客観的な意見を聞くようにしましょう。
他社からも見積もりを取る
訪問してきた業者から見積もりを受け取った場合には、すぐに契約はせず他の業者に見積もりを依頼するようにしましょう。
工事内容や金額などを複数の業者からの見積もりで比較することによって、訪問業者が提案する工事が本当に必要な工事なのか見極めることができますし、考える時間を取るだけでも冷静に判断することができます。
また、優良業者であれば、自分がわからないことを質問しても屋根修理に関しての専門的な知識や経験を基に丁寧に答えてくれますが、悪徳業者の場合はセールスに関する知識ばかりで、専門的な説明をしてくれないような業者も多く存在します。
そのため、金額だけではなく質問に対しての対応なども比較することが、信頼のできる業者を見つける鍵となります。
飛び込み業者を屋根に登らせない
突然訪問してきた業者を「屋根の上に登らせない」というのも重要なポイントです。悪徳業者は、無料点検などを謳い屋根に登り、前述で紹介したような手口を駆使して契約を迫ります。
そのような業者は、まともな点検してくれないだけではなく、問題のない箇所をわざと傷つけて修理を勧めてきたり、修理をしておいたからと費用を請求するような悪質な業者も存在しますので、安易に屋根に上らせないよう注意しましょう。
飛び込み業者に屋根に登って点検したいと言われた場合は、毅然とした態度でお断りしましょう。それでも引き下がらない場合には、警察への通報もためらわないことを相手に通告しましょう。
点検時の屋根の写真を確認する
前提として、突然訪問してくる業者を、屋根に登らせるのはおすすめしません。万が一、点検のために業者が屋根に登る場合には、必ず屋根の様子を撮影してもらい確認するようにしましょう。
撮影する写真は、「屋根全体」と「劣化箇所」を接写した写真の2種類があるのが望ましいです。
屋根の上は普段確認することができないため、写真が無ければ業者にウソをつかれたとしても見破ることができません。また、他人の住宅の写真をあたかも今撮影したかのように見せてくるような業者も存在するので注意が必要です。
そのため、劣化箇所だけではなく必ず本当に自宅の屋根の写真か確認できるような「屋根全体の写真」も業者に提出をしてもらうようにしましょう。
優良業者であれば、お客様への確認のため写真提出を惜しむことはありませんが、悪徳業者にとっては不都合なことが多く、提供を嫌がるケースもあります。
写真撮影を嫌がるような業者であれば詐欺被害のリスクを避けるためにも屋根に登らせないほうがいいでしょう。
もしも屋根修理の悪質な飛び込み営業の被害に遭ってしまったら
万が一悪質な飛び込み営業の被害に遭ってしまった場合には、早急に対処することが重要です。ここでは悪徳業者と契約してしまった場合の3つの対処法を紹介します。
クーリングオフをする
訪問業者が悪徳業者だと気付かず契約を交わしてしまい、契約後に詐欺だと気が付いた場合にはクーリングを利用しましょう。
クーリングオフとは、訪問販売業者と契約を交わしてから8日以内であれば、無償かつ無条件で契約を解除できる制度です。もし、契約時にクーリングオフの説明が無かったり、契約契約書に不備などがある場合には、8日以上経っていたとしてもクーリングオフが可能です。
また、クーリングオフでは、形式は問われませんが「必ず書面でおこなう」必要があります。書面には、契約日、販売業者名、担当者名、契約金額、契約の解除の旨などを記載してから業者へ郵送しましょう。
郵送の際は、「特定記録郵便」または「簡易書留」を利用すると記録が残るので安心です。
また、クーリングオフの適用範囲や記入のルールなどの分かりにくい点も多いので、書類作成で悩まれている場合は、お住まいの地域の消費者センターに相談しながら申請を進めることもできます。
クーリングオフ制度の詳細はこちらのべージでも確認できます。
【屋根修理でクーリングオフできる?適用条件や手続きの流れ】
消費者センターや専門窓口に相談する
契約を交わしてしまったが、今後どう対処したらいいのかわからないという場合、まずは消費者センターや専門窓口に相談してみましょう。
消費者センターは、地方公共団体が設置する相談窓口で、数多くの事例を基にトラブルの対処法やアドバイスをしてくれます。問い合わせ先は地域によって異なりますので、詳しくは下記の参考サイトをご確認ください。
参考サイト:独立行政法人国民生活センター|全国の消費生活センター等
また、問い合わせ先がわからない場合は、消費者ホットライン「188」に電話をすることで、お住いの地域の消費生活相談窓口を案内してくれます。
電話番号 | 188(局番なし) |
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相談受付時間 | 年末年始(12月29日〜1月3日)を除き、原則毎日利用可能。 ※相談窓口によって受付時間は異なります。 |
参考サイト | 消費者庁|消費者ホットライン |
消費者センターの他にも、、国土交通大臣指定の「住まいるダイヤル」といった専門窓口もあります。住まいるダイヤルでは、クーリングオフなど契約関連のトラブルはもちろん、契約前の見積りなどについても第三者の視点から公正なアドバイスを受けることが可能です。
電話番号 | 0570-016-100 03-3556-5147 |
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相談受付時間 | 土、日、祝休日、年末年始を除き、10時〜17時で利用可能。 |
参考サイト | 住宅リフォーム・紛争処理支援センター|住まいるダイヤル |
警察や弁護士に相談する
すでに高額な工事費用を支払ってしまった、クーリングオフに応じてくれないなどの被害が発生している場合には、即座に警察や弁護士に相談しましょう。
弁護士に依頼するには費用が必要とはなりますが、債権回収に向けての具体的なサポートや裁判対応の代行を依頼することができます。
また、警察相談専用電話の「#9110」をご利用することで、電話をかけた地域を管轄する警察本部などの相談窓口へ被害を相談することも可能です。相談内容に応じて相談窓口を案内してくれます。
まとめ
「近所でリフォーム工事を行うので挨拶に来ました」「釘が浮いているのが見えた」などと、親切な業者を装い近づくのは点検商法と呼ばれる悪徳業者の常套手段です。
このような業者に工事を依頼してしまうと、高額な費用を請求されたり、本来は必要のない工事の契約を持ちかけられてしまう可能性があります。
中には、自分が詐欺の被害に遭ったことが恥ずかしくて相談できないという方もいらっしゃいますが、悪いのは人を騙す悪徳業者です。
被害に遭ったら泣き寝入りはせず、公的機関や弁護士に相談し適切に対応してもらうようにしましょう。